先日、とぜんな脊椎外科医のブログで腰痛を伴う血管原生の間欠性跛行の鑑別を忘れずに、、、という話題がありました。
ブログを拝読して驚いたのですが、閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans: ASO)でも腰痛や殿部痛で発症する症例があるそうです。
閉塞性動脈硬化症による間欠性跛行の症状と言えば、てっきり下腿より末梢の症状だと思っていました。何故、私がそう思い込んでいたのかは、定かではありません。。。
本邦の閉塞性動脈硬化症の発生頻度を人口比から検討したものは無いそうですが、仙台市のある地域で平均年齢74歳の住民971
名中2%にASOが発見されたという報告があります。
一方、大阪で重症虚血肢(critical
limb ischemia: CLI)を調査した報告では、人口10万人あたり年間1.3肢が切断されており、ASOに占める
CLIの頻度は15~20%程度とのことです。
そして、CLIの中には血行再建術の適応となる症例があります。血行再建術には、外科的治療と血管内治療があり、その選択に際して参考となるのが大動脈腸骨動脈病変のTASC分類です。

上記の表をみると、今回のとぜんな脊椎外科医先生の症例はD型病変のようです。たしかに、単純X線像でも総腸骨動脈の石灰化を認める症例を散見します。要注意ですね・・・
このような症例でもABIは有効なようです。これからは、間欠性跛行+総腸骨動脈の石灰化を認める症例では、殿部痛や大腿部痛であってもABIを施行しようと思いました。
いや~、勉強になります。
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ちょうどこの症例のことで心臓血管外科の先生とディスカッションしました。
彼らの認識では、間欠性の腰痛というよりは、臀部痛こそが内腸骨動脈の血流低下で生じることがある、というもので驚いてしまいました。そして腰椎の伸展位をとらずとも、立ったまんま静止するだけで改善する所見が特徴です、と言われ、是非ABIを測定しましょう、という結論になりました。
余談ですが、そういう病態があるとなるとcervical anginaという下位頸椎のradiculopathyを疑う症状がありますが、もしかしたら鎖骨下動脈盗血症候群などの一症状で発症することもあるかもしれません。これからは、そういった目で診療にあたってみたいと思いました。
今後ともどうぞご指導お願いします。