先日、興味深いタイトルの記事をネットで拝見しました。ファーウェイの初任給40万円はトクかリスクか です。以下に転載します。





中国企業であるファーウェイの日本法人が初任給40万円で新卒求人を出している件が話題となりました。一般的な大企業で大卒新人の初任給は20~25万円が相場ですから、ずいぶんな太っ腹に見えますね。


なぜ、ファーウェイと日本企業の初任給はこれだけの格差が生じているんでしょうか。そして、若者はどちらに就職する方がおトクなんでしょうか。



ァーウェイは“たぶん”終身雇用じゃないから

同じような事業を似たような規模で行っている企業同士なら、人件費の総額にそう大きな違いはありません。差が出るのは分配の仕方が原因です。日本の大手企業は終身雇用なので、どうしても毎月の給料は低く抑える必要があります。細く長く支払うイメージですね。また、年功序列で高給取りのベテラン社員が大勢いるので、その人たちにまわす人件費も確保しないといけません。結果、新人の初任給は低く抑えられることになります。


そうしたしがらみのないファーウェイの場合は、自由に労働の対価として相応しいと考える賃金水準を提示でき、それが40万円だったというわけです。「たぶん終身雇用じゃない」と書いたのは、そうはいっても若く勢いのある同社の場合は結果的に長期雇用が成立する可能性が少なくないからです。


ちなみに「日本の労働法制の下で終身雇用じゃない働かせ方なんて出来るの?」と疑問に思う人もいるでしょうが、採用時にあらかじめ業務内容を明確にし、相応の賃金を支払っておけばたいていの場合は何とかなります。



そして、日本企業も“たぶん”終身雇用じゃない

というわけで、きっと読者の中には「なら、長く安定して働きたいなら終身雇用の日本企業が良くて、リスクを取りたいならファーウェイの方がおススメってことですね?」と思った人もいることでしょう。


90年代だったら、筆者もそうアドバイスしたと思います。でも、シャープや東芝の例を見ても明らかなように、大企業といえども終身雇用が保証できる時代ではなくなりました。文字通り解雇されるようなケースは稀でも、ぜんぜん畑違いの業種に配置転換されたり、追い出し部屋のような扱いを受け止むを得ず離職する人は珍しくありません。そういう意味では、「職を失うリスク」はファーウェイも日本企業もたいして変わらないだろうというのが筆者の意見です。


むしろ、日本企業にはまったく別のリスクもあります。それは「65歳まで雇ってもらうこと前提で会社に預けておいた報酬を受け取れなくなるリスク」です。同じ「職を失うリスク」がある以上、生産性に応じた賃金をタイムリーに払ってくれるファーウェイの方がむしろ低リスクだと筆者は考えますね。


DeNAやサイバーエージェントといった非・年功序列型企業が東大生の就職先として人気のある現実を踏まえれば、ファーウェイもきっと優秀層の注目を集めることでしょう。


他の日本企業が優秀層を囲い込むには、生産性の低い社員をリストラし、人事制度も脱年功序列のものに改め、ファーウェイ以上の初任給を提示するしかありません。今回のファーウェイの求人は、優秀層の争奪戦を通じて、中期的に日本企業全体に変革を促す外圧となるでしょう。





皆さんは、どう思われたでしょうか? ファーウェイは日本での知名度はあまり高くないですが、中国の深圳発の” 元 ”スタートアップで、いまでは世界有数の巨大企業です。


著者はファーウェイ寄りの見解ですが、私も全く同感です。日本企業の若年者の給与が低いのは、分不相応の給与を取るベテラン社員に人件費を回さざるを得ないからです。


これは長期雇用が前提となっており、世代間の互助的な意味合いが強いです。いわば、年金制度の会社版と言っても良いと思います。


企業の場合は、年金制度のように極端な人口構成のひずみは生まれにくいですが、その代わりに企業のゴーイングコンサーン(継続企業の前提)が問題となってきます。


つまり、若い時に薄給に耐えても、ベテランの年齢に達したときに勤めていた企業が傾いていれば、高給を得ることなくそのまま終わってしまうという最悪な結果になります。


このように考えると、年功序列型の賃金体系は、制度疲労をきたしていると言わざるを得ません。全ての原因は企業のゴーイングコンサーンに疑義がついているからです。


1990年台までは圧倒的な技術力で世界を席巻しましたが、産業構造の変化で日本型経営の強みが無くなりました。このため、大企業でも簡単に破綻する事態が多発しているのです。


私がもし大学生であれば、年功序列型の日本企業ではなく、間違いなく非年功序列型の企業に就職するでしょう。労働の対価は、その場でもらいたいからです。


この点、医師はファーウェイ型の給与体系なので、非常に有利だと思います。意外にも、医師は、最初からグローバル企業が採用している給与体系に近いんですね。


ただし、この非年功序列型の給与体系のために「自分たちは高給取りだ」と勘違いしてしまうリスクが高いことには注意が必要です。


もちろん、多少は高給取りだとは思います。しかし、その”高給”の大部分は、ベテランになったときの高度な医療技術に対する「報酬の先取り
に過ぎないことを認識するべきだと思います。





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