先日、20歳台後半の男性が、半年前から続く右股関節屈曲時の引っかかり感と違和感を主訴に初診されました。このような症例では、どのような疾患を想定するべきでしょうか?
まず、T2WIの両股関節前額断像です。右大腿骨頚部前方に骨嚢胞形成を疑います。冠状断では、右大腿骨頚部前方の骨嚢胞形成ははっきり分かりませんでした。
次に、STIRの両股関節前額断像です。右大腿骨頚部前方に骨嚢胞を形成していることが、よりはっきりと分かります。ここまでくれば、主訴と併せてFAIであることが分かります。
FAIとはFemoroacetabular impingement の略で、日本語では大腿臼蓋インピンジメントと訳されています。FAIには下記の3つのタイプがあります。
- cam type
- pincer type
- combined type(①と②を併せ持つタイプ)
①のcam typeは大腿骨頚部の形態異常で、ペルテス病や大腿骨頭辷り症の後遺症として発症するケースが多いです。
一方、②のpincer type は寛骨臼の前方開角不足が原因です。特に若年男性では寛骨臼の前方開角が小さい傾向にあるので、pincer type のFAIには注意が必要です。
今回の症例では、上図のように寛骨臼前方開角がほぼゼロでした。このため、大腿骨頚部前方病変を認めるものの(=cam type)、pincer typeの要素もあり、③のcombined typeとなります。
この患者さんはアスリートではなく、症状は軽度の違和感のみなので、しばらく経過観察としました。尚、治療に関しては、こちらで紹介されているように鏡視下手術となります。
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