先日、脊椎外科医師と話しをしていた際に、少し驚いたことがあったのでご紹介したいと思います。
脊椎外科医は、私のような関節外科医からみると華々しくて結構眩しい存在です(笑)。手術点数が高くて、常に術式やデバイスが進化しています。
人工関節のようにハイリークロスリンクの登場以降の進化が止まった(?)かのように見える旧態依然の領域と異なり、日々進歩している花形分野です。
そんな前途有望に見える脊椎外科ですが、実際に脊椎外科の最前線に居る医師からみた風景は、私のような場末の傍観者とは少し異なるようです。
脊椎外科医は、下記のようなキャリアが目立つそうです。
- 公的大規模基幹病院の部長を目指すタイプ
- 50代でバーンアウトするタイプ
①のタイプは定年まで、臨床や研究で走り続けます。しかし、ハードワーク故に、途中で家庭崩壊したり、体調を崩す人が多いそうです。
②のタイプは、臨床への情熱を失いバーンアウトしてしまうタイプですが、こうなると大規模基幹病院で働き続けることが困難となるため、途中で左遷されてしまいます。
脊椎外科医は、大規模基幹病院では重宝されます。しかし、大規模基幹病院では売上と給与所得が相関するわけではなく、卒業年次で給与が決まってしまう傾向にあります。
このため、ハードワーク+ハイリスク=セイムリターンとなってしまいがちです。傍からみていても、これは非常に燃費が悪くて損な生き方です。
これを避けるためには、成果報酬型の脊椎単科病院や中小規模病院へ転職することを考えざるを得なくなります。なるほど、なかなか厳しい現実ですね。
関節外科医の世界は、個人的なイメージではローリスク・ミドルリターンなので、ワークライフバランスを考えると捨てたものではないのかもしれません。
隣の芝生は青く見えると言いますが、何事もその世界の中に入ってみなければ本当のところは分からないモノですね。
これは心臓外科や移植外科や肝胆膵外科だけの話だと思っていましたが、脊椎外科医も同様なジレンマに苦しんでいるんですねえ。
私も外科系ですが、たまたま「自分一人で完結し、中小医療機関でもできる手術」が専門だったので、結果的にこのジレンマを回避できて幸運でした。