私は股関節外科医なので、外来では変形性股関節症の患者さんを診察する機会が多いです。末期の患者さんでも疼痛や跛行が高度でない場合には、1年に1度のフォローです。


しかし、患者さんによっては、手術を受けるか否かを
1年間も逡巡するという方がいらっしゃいます。先日もそのような患者さんが外来受診されました。


私にとってTHAはありふれた手術ですが、その患者さんにとっては、一生に1~2度の大きな決断を要するイベントです。


このため、診察前にしっかり勉強している方が多く、先日の患者さんは書店で購入した変形性股関節症の本を持参してきました。


「どれどれ」と内容を確認して、思わず「う~ん」と唸ってしまいました。全体の80%は、海千山千の都市伝説的な怪しげな情報だったのです。



まともと思われる手術治療のパートも、THAとキアリ骨盤骨切り術の紹介のみでした。何故キアリが? と不思議に思うと、監修者が某大御所先生だったので納得です(笑)。


こんな怪しさ満載の本が、堂々と書店で売られているようです。これではネット情報と大差ありません。たしかに股関節学を購入しても、一般の方はチンプンカンプンでしょう。



それから少し考えたのですが、日整会がイニシアチブをとって、一般の方向けの本を出版すればよいのではないかと思いました。


場末病院勤務の一整形外科医としては、一般の方向けの疾患別書籍の発刊を希望します。このような地道な患者教育によって、日本の医療は良くなる気がします。





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初学者が股関節外科の基礎および治療体系を学習するにあたり最もお勧めの書籍です。日本を代表する執筆陣が股関節外科に関するあらゆる事項を、非常に分かりやすく解説しています。この1冊があれば股関節外科のほぼ全ての疑問点を解消できると思います。