日整会誌 92:449-453 2018に、少年野球選手における肘離断性骨軟骨炎に対する保存療法というシンポジウムがありました。肘離断性骨軟骨炎(OCD)のまとめは下記です。



離断性骨軟骨炎の初期や進行期では保存療法の適応となる。初期・進行期では症状の乏しい例が多いが、たとえ無症候性でも投球を中止することが望ましい。


保存療法による修復率は初期で90%、進行期で50%程度であり、病巣修復の確認にはCTの活用が勧められる。


病巣修復が停止したと判断されるのは、小頭や外側上顆の骨端線が閉鎖し、3ヵ月以上画像所見 が変化しない場合で、これらの所見がみられるまでは病巣縮小を目指すべきである。




OCDの病期は、小学生では初期が90%以上を占めますが、中学・高校生では15%程度に過ぎません。OCDの経過は年齢と密接な関係があり、大半は小学生期に発生します。


OCDの病期と骨年齢の関係を調査すると、小頭の骨端線は初期で開存、進行期で癒合中、終末期で閉鎖にそれぞれピークがあり、小頭骨端線の状況も病期判定の参考となります。


OCD 治療の原則は、初期と進行期では保存療法、終末期では手術です。ただし、進行期で病巣修復が遅延している症例では手術、終末期でも症状の乏しい症例では保存治療です。


保存治療の実際は、投球・打撃のみならず腕立て伏せ、重量物拳上、グランド整備や用具の片づけも禁止し、ランナーコーチャーと食事・書字動作のみを許可するそうです。




注意点 1


X 線での完全修復が得られるまで保存療法は継続すべきですが、症状がなくなると患者・家族や指導者は障害が治癒したと勘違いする場合があります。


したがって、医師は現在の状態が治癒過程のどの時点にあるのかを正確に判断し、保存療法継続の必要性について説明することが求められるとのことです。


このあたりを、患者・家族・指導者に納得させることは容易ではありません。判断し説明できるか否かが治療の成否を左右すると言っても過言ではないでしょう。




注意点 2


検診で発見された無症候例に対しても投球を中止することが望ましいと考えられているそうです。無症状なのに厳しい保存治療を施行するのは難しそうですが・・・







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