先日、走り出そうとしたときに右下腿後面の痛みが出現したという主訴の40歳台男性が受診しました。その数日前から同部位に違和感があったそうです。
アキレス腱のレリーフは確認できますが、Thompson testは陽性でした。圧痛点はアキレス腱停止部から15cm程度中枢です。 また同部位に一致して皮膚の陥凹を認めました。
これらの所見から、下腿三頭筋の筋腱移行部損傷と診断しました。筋腱移行部損傷は、ときどき診察する機会があります。
しかし、アキレス腱のレリーフがあることと、足底筋や足趾屈筋の力である程度は足関節を底屈できるので注意が必要です。
部位が腓腹筋損傷と紛らわしいのですが、Thompson testが陽性なので鑑別可能です。つまり、下腿三頭筋の筋腱移行部で、それより末梢との連続性が途絶している状態です。
このため、治療はアキレス腱損傷に準じたgravity positionでの外固定を行う必要があります。腓腹筋損傷と思って外固定無しにすると著明な足関節底屈力の低下を残します。
病態はアキレス腱損傷なので、見逃すと陳旧性アキレス腱損傷と同じ状態になってしまいます。治療がかなりやっかいになるので注意が必要です。
私は筋腱移行部損傷を疑う場合は、Thompson testを施行するようにしています。このあたりのピットフォールはあまり教科書には載っていないので注意が必要だと思います。
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