日本医師会から送られてきた資料の中に、栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の分析 という小冊子がありました。以下要約します。
【胃管挿入のリスク】
提言1
胃管挿入において、嚥下障害、意思疎通困難、身体変形、挿入困難歴などがある患者は誤挿入のリスクが高いことを認識する。
【胃管挿入手技】提言2
誤挿入のリスクの高い患者や挿入に難渋する患者では、可能な限りX線透視や喉頭鏡、喉頭内視鏡で観察しながら実施する。
【胃管挿入時の位置確認】
提言3
気泡音の聴取は胃内に挿入されていることを確認する確実な方法ではない。胃管挿入時の位置確認は、X線やpH 測定を含めた複数の方法で行う。特にスタイレット付きの胃管を使用するなど穿孔リスクの高い手技を行った場合は、X線造影で胃管の先端位置を確認することが望ましい。
【胃管挿入後の初回投与】
提言4
胃管挿入後は重篤な合併症を回避するため、初回は日中に水(50 ~ 100 mL 程度)を投与する。
【水の投与以降の観察】
提言5
投与開始以降は誤挿入を早期発見するため、頻呼吸・咳吹など呼吸状態の変化、分泌物の増加、呼吸音の変化、SpO,低下などを観察する。特に誤挿入のリスクが高い患者は SpO2 のモータリングを行うことが望ましい。
【院内体制・教育】
提言6胃管挿入は重篤な合併症を起こしうる手技であるということを周知し、栄養状態や胃管の適応に関する定期的評価、胃管挿入に関する具体的な 方法について、院内の取り決めを策定する。
この小冊子をみて、胃管挿入が意外なほど危険な医療行為であることに驚きました。もちろん、誤挿入によって重大な事態を招くことは理解しています。
しかし、X線透視・造影、喉頭鏡、喉頭内視鏡、pH 測定まで提言で言及されるとはタダ事ではありません。そして、実際にそこまでやっているところは見たことがないです。
胃管挿入の確認=胸部単純X線像だと思っていましたが、難症例ではそれだけでは危険ということのようです。認識を改めさせられる小冊子でした。