後側方侵入の股関節外科医にとって、股関節後方軟部組織の温存は至上命題です。しかし、軟部組織を温存すればするほど手術の難易度は上昇します。
特に、患者さんの骨質が不良なことが多い大腿骨頚部骨折においては、関節包と短外旋筋群のどちらを犠牲にするかについて悩む症例があります。
感覚的には短外旋筋群を温存するよりも関節包を温存する方が、関節安定性への寄与度が高い印象です。しかし、真実は闇の中だろうと思っていました。
ところが、すでにこのことに関する答えが出ていたのです!! 具体的には下記の論文に私の疑問への回答が記載されていました。
大阪大学の高尾先生の論文で、Jornal of Arthroplastyにアクセプトされています。キャダバーを使用した研究で、後方関節包と短外旋筋群を切離して骨頭の移動量を測定しています。
結論は、関節包を切離した方が有意に骨頭の移動量が大きかったようで、私の感覚と同様に短外旋筋群よりも後方関節包の方が関節安定性に寄与しています。
う~ん、股関節外科医であれば誰もが感じる疑問を、研究に落とし込むのは凄いことだと思いました。さすが、阪大グループ...。脱帽です。
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初学者がTHAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です
やはり後方関節包温存が後方アプローチの胆なんでしょうか。