先日、90歳の血液透析患者さんが、右手の環指と小指の伸展障害で初診しました。診察すると、麻痺ではなく伸筋腱の皮下断裂のようです。


エコーで確認すると、中手骨頚部あたりで皮下断裂していました。右手は利き手とのことで、環指と小指が自動伸展できないのでお箸を使いづらいとのことでした。


一応、関節リウマチの除外診断は行ったうえで、さて治療をどうしよう...となりました。認知症はほとんどなさそうです。


伸筋腱断裂の部位から考えると移行術は難しそうで、手術を施行するなら腱移植術になります。腱移植といっても伸筋腱なのでさほど難易度は高くありません。


しかし、最終的には右側がシャント側であるということが決め手となり手術は施行しないことにしました。こちらでアップしたように、血液透析シャント側の手術は避けるべきです。


この患者さんに関しては、年齢やADLなどで保存治療が望ましいと思われる条件がありますが、決定的だったのはシャント側だったからです。


シャント側の上肢手術は何を併発するか分かりません。腱鞘切開術であってもミゼラブルな事態に発展する可能性もあるのです。個人的にはシャント側手術は地雷だと思っています。






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