TKA術後の伏在神経膝蓋下枝損傷の存在を知って以来、術後患者を観察していると、不定愁訴と思っていた疼痛や違和感は、結構な頻度で伏在神経絡みであることに気付きました。


リリカを処方すると軽快する症例が多いですが、副作用が強くて十分量を投与できないこともあります。やはり伏在神経膝蓋下枝損傷を予防する手段を考える必要があります。


医中誌を検索すると、TKA後の伏在神経膝蓋下枝に関する論文がいくつかヒットします。この中で皮膚切開をできるだけ外側におく術式が紹介されていました。


伏在神経膝蓋下枝の切離を防ぐことは不可能ですが、皮膚切開を前外側におくことで可能なかぎり外側で伏在神経膝蓋下枝を切離するというコンセプトのようです。


この術式の利点は、伏在神経膝蓋下枝損傷による術後の膝関節痛の緩和だけではなく、ひざまずき動作時の疼痛も緩和できるようです。


術式自体は非常に簡単で、皮膚切開を膝蓋骨から膝蓋腱の外側縁にするだけです。支帯上まで一気に切開して、脂肪組織内に切り込まないようにして内側皮弁を起こします。


そして、膝関節内へのアプローチは通常通りに medial parapatellar、もしくは mid-vastusや sub-vastusとなります。


少々皮膚切開が長くなりますが、術中操作の難易度は変わらないようです。たったこれだけで頑固な伏在神経膝蓋下枝損傷の症状を回避できるのであれば非常に好ましいです。


手術のポイントは、脛骨結節部の皮切が確実に脛骨結節よりも外側になるようにすることです。FTAの大きい症例では、術後に脛骨結節内側に皮切が行きがちなので注意が必要です。






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