人工股関節全置換術(THA)は非常に完成された治療法ですが、時として重篤な合併症を併発することがあります。代表的なものは感染でしょう。


比較的頻度は少ないものの、発生した時には治療に難渋します。TKAの術後感染より若干予後が良い印象は受けますが、楽観視できる状態ではありません。


通常は力業で感染を制御しますが、いろいろな患者さん背景のため、最終的に感染コントロールできない症例も散見します。


こうなってしまうと、人工関節をすべて抜去して、いわゆる Girdlestone手術を施行せざるを得ません。しかし、Girdlestone手術を施行すればそれで OKというわけにはいきません。


人工関節後感染の本態は骨髄炎なので、単にインプラントを抜去しただけでは骨髄炎を制御できないからです。腐骨を掻爬しても、寛骨臼~大腿骨近位部に巨大な死腔が残ります。


この死腔が存在するかぎり感染制御は難しいです。このようなケースでは股関節内にできた大きな死腔を埋める必要があります。具体的には筋弁です。


残存している筋肉を有茎で股関節内に持ってくることで、①死腔を充填 ②血行のある組織なので感染制御に資する という効果が期待できます。


股関節外科医にとって絶対に施行したくない手術ですが、どうしても感染制御できずに Girdlestone手術を施行せざるを得ない症例では、筋弁を忘れないようにしましょう。






★★★  管理人 お勧めの医学書  ★★★

 
初学者が股関節外科の基礎および治療体系を学習するにあたり最もお勧めの書籍です。日本を代表する執筆陣が股関節外科に関するあらゆる事項を、非常に分かりやすく解説しています。この1冊があれば股関節外科のほぼ全ての疑問点を解消できると思います。