先日、人工股関節全置換術(THA)希望の患者さんが受診しました。80歳台の方で、Crowe type 3の高位脱臼股です。しかも単純X線像では、大腿骨がかなりの粗鬆骨です...。


CTでは、腸骨翼内に新臼蓋が存在しており、寛骨臼前方開角はマイナス45度でした(つまり後方開角)。必然的に原臼蓋まで引き下ろす必要があります。


これはなかなか難易度の高い手術になりそうだなぁと思っていましたが、よくよく主訴を聞いてみると股関節部痛ではなく
「歩きにくさ」で困っているとのことです。


診察室内で少し歩いてもらうと、著明な中殿筋爬行でした。これだけ派手に Trendelenburg signが出ていると、歩きにくさを自覚するのも当然です。


中殿筋爬行の原因は、高位脱臼による中殿筋機能不全と脚長差です。中殿筋機能不全に関しては、原臼蓋に股関節を持っていくしかないですが、脚長差は補高で簡単に補正できます。


試しに 10mm補高すると、歩容が劇的に改善しました。THAを希望されたのが疼痛ではなく歩容改善なので、補高だけでニーズを満たしたことになります。


殿筋内脱臼ではないので、今後股関節痛を発症する可能性はあります。しかし、現時点では差し迫った手術の必要性は無くなったため、このまま少し経過観察しようと思います。


患者さんも手術せずに「治った」という気持ちになったようで、とても満足して帰っていきました。股関節診療では時々こういうことがあります。







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