日経メディカルに興味深い記事がありました。
英国から逆輸入!? 常識覆す放射線増感剤 です。


要約すると、高知大学放射線科の教授だった小川恭弘先生が開発したKORTUCという放射線増感剤が、日本では製品化されなかったが英国で実用化されつつあるという話です。


KORTUCは 3%オキシドールをヒアルロン酸で薄めて 0.5%溶液にしたという単純なものです。これを腫瘍に局所注射して放射線治療すると劇的な効果が発現します。


放射線治療で照射されるX線の効果は 1/3が直接的なDNA傷害によるものですが、残りの2/3
は水分子を分解 ⇒ フリーラジカルを形成 ⇒ 酸素と反応してDNAを傷害という機序です。


腫瘍は抗酸化酵素が豊富で低酸素状態なので放射線治療に抵抗性がありますが、KORTUCを腫瘍内に注入することで腫瘍を酸化してX線の効果が高めるのです。


国内で実施されたI、II期の乳癌患者72例(手術拒否例)に対するKORTUCの治療成績は、5年全生存率100%、無病生存率と局所制御率は97.1%と標準治療に比べて遜色ありません。


英国癌研究所も「KORTUCの有効性が証明されれば、世界中の何百万人もの患者の放射線治療を改善する可能性がある」とコメントしています。


このような素晴らしい治療が日本で実現化しなかったのは、「臨床効果は認められても、採算が取れない」という理由だそうです。



KORTUCの材料費は数百円。日本では原価の3倍を超える価格が付いた薬は前例がない。一方、治験を行うには億単位の資金が必要なので、日本で商品化する道はほぼ閉ざされていた



上記は小川先生の弁ですが、思わず考えさせられます。なるほど、高価な治験費用を吸収するために高価な治療しか製品化されないという、医療費高騰が運命付けられた仕組みです。


せっかくの独自アイデアが製品化に至る仕組みの問題で頓挫してしまい、外国で製品化されて日本に逆輸入されるという目も当てられない状況のようです。困ったものですね...。






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