先日、股関節外科医と感染症例について雑談をしていました。人工関節置換術後の起炎菌としては黄色ブドウ球菌が最多です。


黄色ブドウ球菌は毒性が強く、またバイオフィルムを形成するため鎮静化が難しいことはよく知られています。主治医にとってこんな厄介な細菌はありません。


このため術後感染が発生すると憂鬱になりますが、起炎菌が黄色ブドウ球菌ではなく、大腸菌等のグラム陰性桿菌では、意外と黄色ブドウ球菌よりも鎮静化しやすいことがあります。


その理由はグラム陰性桿菌はバイオフィルムを形成しないことにありそうです。バイオフィルムさえ形成しなければ化学療法は強力な武器となります。


もちろんグラム陰性桿菌が起炎菌ということは、それだけ全身状態が悪い症例が多いです。この点を考慮するとグラム陰性桿菌が組みやすい相手というわけではありません。


しかし、全身状態さえ改善できれば起炎菌がグラム陰性桿菌の場合はある程度希望が持てます。けっして、グラム陰性桿菌=終わったな...ではないと思うのです。



2021/10/12 午後22時追記
グラム陰性桿菌をはじめとして、ほとんどの細菌はバイオフィルムを形成するようです。結核菌はバイオフィルムを形成しないと思っていましたが、コレも怪しそうです...。






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