先日、股関節外科医と感染症例について雑談をしていました。人工関節置換術後の起炎菌としては黄色ブドウ球菌が最多です。
黄色ブドウ球菌は毒性が強く、またバイオフィルムを形成するため鎮静化が難しいことはよく知られています。主治医にとってこんな厄介な細菌はありません。
このため術後感染が発生すると憂鬱になりますが、起炎菌が黄色ブドウ球菌ではなく、大腸菌等のグラム陰性桿菌では、意外と黄色ブドウ球菌よりも鎮静化しやすいことがあります。その理由はグラム陰性桿菌はバイオフィルムを形成しないことにありそうです。バイオフィルムさえ形成しなければ化学療法は強力な武器となります。
もちろんグラム陰性桿菌が起炎菌ということは、それだけ全身状態が悪い症例が多いです。この点を考慮するとグラム陰性桿菌が組みやすい相手というわけではありません。
しかし、全身状態さえ改善できれば起炎菌がグラム陰性桿菌の場合はある程度希望が持てます。けっして、グラム陰性桿菌=終わったな...ではないと思うのです。
2021/10/12 午後22時追記
グラム陰性桿菌をはじめとして、ほとんどの細菌はバイオフィルムを形成するようです。結核菌はバイオフィルムを形成しないと思っていましたが、コレも怪しそうです...。
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コメント一覧 (4)
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- 2021年10月12日 21:23
- 大腸菌や緑膿菌などグラム陰性桿菌はバイオフィルムつくる有名な菌です。
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- 2021年10月12日 22:05
- >>1
ご指摘いただきありがとうございました!
調べてみると仰せのとおりでした。
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- 2021年10月12日 22:10
- 大腸菌は御しやすいですが、緑膿菌はバイオフィルムを形成します。
陽性球菌表面のペプチドグリカンはTLR2を介してT-regを抑制し炎症反応惹起に働きますが、陰性桿菌表面のLPSはTLR4を介してTh17を活性化し骨破壊を惹起します。臨床でも、緑膿菌感染は急速な骨破壊像を呈することが多い印象です。どちらも要注意です。
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- 2021年10月13日 17:32
- >>3
専門的過ぎて私では理解できなかったです 笑
肌感覚として大腸菌は御しやすく、黄色ブドウ球菌や緑膿菌は難敵なのは、バイオフィルムの問題だけではなさそうですね...
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