日整会誌95:628-637 2021に興味深い教育研修講座がありました。頚椎人工椎間板置換術の実際と今後の展望です。
関節外科医にとって人工椎間板置換術は縁遠い話ですが、整形外科医であるからには脊椎外科の大きな流れも知っておく必要があります。
現在日本で上梓されている人工椎間板は 2種類あります。メドトロニック社の Prestige LPとジンマーバイオメット社の Mobi-Cです。
一方のジンマーバイオメット社の Mobi-Cは、モバイルベアリングのTKAっぽいです。インサート(?)にはサイズバリュエーションが豊富にあるようです。
日本での導入は 2017年とかなり遅かったようですが、その理由は①欧米では頚部神経根症に対して積極的に手術を行う ②日本では後方法へ過剰にシフトしていた ためです。
広義のデバイスラグですが、頚椎人工椎間板置換術ではむしろ良かったかもしれません。人工椎間板置換術はけっして夢の治療法ではなく下記のような問題点もあるからです。
- 椎体へのインプラントの沈み込み
- 後方への脱転による脊髄損傷
- 椎体骨折
- 頚椎の後弯化
- 異所性骨化による骨性癒合
- 固定マジックを期待できないので除圧をしっかりする必要がある
たしかに隣接椎間障害を防止できるメリットはありますが、現時点では人工関節全置換術ほど完成された術式ではないようです。
若年者の単椎間のヘルニアに伴う神経根症および脊髄症が最も良い適応だそうなので、症例を積み重ねて順調に発展することを祈念したいですね。
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