日本医師会雑誌の第150巻・第7号にの特集は腰痛の臨床でした。医師会雑誌の特集は、その疾患の権威ある先生方が他科の医師向けにまとめています。


冒頭の対談で福島県立医大の紺野教授がお話された、慢性腰痛の多くは心理社会的要因が強く関与しているという話題をご紹介します。


2016年に発表された報告では、日本では非特異的腰痛は22%に過ぎなかったとされています。その 22%の中には、心理社会的要因による慢性腰痛の患者さんが含まれています。


このような
非特異的な慢性腰痛の患者さんに対しては、欧米の報告では認知行動療法が有効なことが多いそうです。



認知行動療法とは、ものの考え方や受け取り方(認知)に対して働きかけることで、気持ちを楽にしたりストレスを軽減させる治療方法です。


日本では腰痛に対して
認知行動療法を実施する体制が不十分ですが、認知行動療法までいかなくても定期的に通院させるだけでも効果はあるという言葉に驚きました。


通院を続けることによって患者さんができることが多くなり、痛みの態度は変わらなくても社会生活が維持できればよいという考え方のようです。


こうなると整形外科開業医の出番です。病院勤務医が腰痛患者さんを定期的に外来フォローすることは困難ですが、開業医であれば収益的にも患者ニーズともマッチします。


よく腰痛患者さんをダラダラと外来通院させているという批判が開業医に対してなされますが、実はこの診療行動は心理社会的要因の観点では合理的だったのです。


今回の日本医師会雑誌の対談では、腰痛および開業医で行われている治療についての
思いがけないノイエスを得ました。まだまだ知らないことが多いものです...。







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自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。