先日、下垂体腫瘍摘出術後の患者さんの手術ありました。下垂体腫瘍の手術歴がある患者さんはそれほど多くありません。


お薬手帳を確認すると、コートリルとチラージンが処方されています。コートリルは鉱質コルチコイドなので整形外科医が自発的に処方する機会はほとんど無いと思われます。


このためステロイドカバーが必要性の判断がすぐにできませんでした。当日手術だったので急いでステロイドカバーの要否を調べると基本的な事項が抜けていることに気付きました。


そもそも下垂体腫瘍摘出術後の患者さんは下垂体機能不全なので、考えるまでも無くステロイドカバーは必須だったのです...。


1. 1 週間以上、ステロイドを投与されている

2. 術前 6ヵ月に4 週間以上ステロイド投与を受けている

3. 術前 6ヵ月以内にコルチゾール 1 g 以上あるいは同等以上のステロイド投与を受けている

4. アジソン病の患者、または両側副腎摘出術や下垂体摘出術の既往およびこれらの手術予定の患者

5. ACTH 刺激試験などで副腎機能低下が明らかな患者



教科書的にも長期間のステロイド投与やt直近のステロイド投与と並んで下垂体腫瘍摘出術後はステロイドカバー必須と記載されています。少し恥ずかしいですね(苦笑)。


周術期のステロイドカバーの量は下記のごとくです。


小手術

ステロイド維持量+コルチゾール 25mg もしくはメチルプレドニン 5mg を術当日のみ静脈内投与、術翌日より維持量へ


中手術

ステロイド維持量+コルチゾール 50~70mg またはメチルプレドニン 10~15mg を術当日静脈内投与し、以後1~2 日で漸減し維持量へ



大手術

ステロイド維持量+コルチゾール 100 ~ 150mg またはメチルプレドニン20 ~ 30mgを術当日静脈内投与し、以後2~3 日で漸減し維持量へ





整形外科手術は再置換術や一部の腫瘍切除術を除き、小~中手術に該当するものと思われます。高齢者の大腿骨近位部骨折などは小手術でしょう。


高齢者に大量のステロイドを投与するのも気持ち悪いので、小手術とみなしてステロイドカバーの量を決定するインセンティブが働きそうです。



それにしても下垂体腫瘍摘出術後にステロイドカバー必須であることは盲点でした。まったくお恥ずかしい限りです。






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