皆さん、田川ノミってご存知でしょうか? 正確には田川式臼蓋骨切術用ノミという名称で、寛骨臼回転骨切り術で使用する特殊なノミです。


田川ノミは特殊な角度と曲率半径をしており、寛骨臼回転骨切り術しか使途がありません。そして股関節外科医にとって骨切り術は特別な意味を持っています。


THAなどの人工関節置換術は極論すれば誰でもできる手術です。しかし骨切り術は「匠の技」が必要な特殊技能であり、後の世代に伝承するべき技術なのです。


一方、昨今のインプラントの劇的な性能向上により、骨切り術の優位性は低下しています。股関節外科の中でも骨切り術は絶滅危惧種(?)に指定されかねません。


そして例に漏れず、私もこの 10年ほどは骨切り術をまったく執刀していません。比較的若年者であってもインプラント耐用年数向上と術後後療法の簡便さでTHAを選択しています。


股関節外科医としては多少の寂寥感がありますが時代の流れだと思っていました。ところが母校の大学の股関節外科医から田川ノミを譲ってもらえないかとのオファーがありました。


何でもいろいろな病院に出向いて骨盤骨切り術をやっているそうなのですが、大学のノミを搬送するのに時間がかかるため不便に感じているとのことでした。


10年以上私の机の中で眠っていた田川ノミが、久し振りに陽の目をみる時がやってきたようです! ぜひ患者さんのために役立ててもらおうと、その先生に譲ることにしました。


出張までして骨盤骨切り術を施行している大学の股関節外科医に敬意を表するとともに、私の田川ノミが再び世の中の役に立てる時が来たことをとても嬉しく思いました。






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