先日、既往症に末期変形性股関節症のある大腿骨転子部骨折の患者さんが搬送されてきました。変形性股関節症に大腿骨近位部骨折を併発するのは珍しいです。


単なる大腿骨転子部骨折であれば、通常の術式で問題無いです。しかし、将来的にTHAも予想される変形性股関節症が既往症にある場合は、術式をよく検討する必要があります。


大腿骨転子部骨折の術式として、①髄内釘 ②CHSなどの骨接合術の2種類が挙げられます。より一般的な術式は①髄内釘でしょう。②CHSと比べて侵襲が小さいのが利点です。


しかし THAを前提に考えると、①髄内釘には2つの問題点があります。

  • ネイルの挿入口になる大転子が破壊される
  • 髄内釘に接した部分の骨硬化のため、ステムのラスピングが非常にやり辛い。


ラグスクリュー部分の骨欠損は両者ともあるので仕方ありません。しかし髄内釘の選択で発生する大転子の破壊や髄内の骨硬化は、CHSなら避けることができます。


少々面倒くさいですが、変形性股関節症が既往症にある患者さんでは、CHSの方が無難であると考えました。ちなみに THAを施行する時にはセメントステムを推奨します。





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