2022年度の診療報酬改定で、大腿骨近位部骨折関連で興味深い改訂がありました。骨折後48時間以内に手術を施行すると、4000点が加算されるそうです。





導入の背景は、高齢者の大腿骨近位部骨折に対する適切な治療を推進する観点のようです。早期手術が大腿骨近位部骨折の予後を改善することが認められたのでしょう。


ところが、この加算には下記のような施設基準があります。問題になるのは、(6)の年間60症例以上ではないでしょうか。


[施設基準]

(1) 整形外科、内科及び麻酔科を標榜している病院であること。

(2) 整形外科について5年以上の経験を有する常勤の医師が2名以上配置されていること。

(3) 麻酔科標榜医が配置されていること。

(4) 常勤の内科の医師が1名以上配置されていること。

(5) 緊急手術が可能な体制を有していること。

(6) 大腿骨近位部骨折患者に対する、前年の区分番号「K046 骨折観血的手術」及び「K081 人工骨頭挿入術」の算定回数の合計が60回以上であること。

(7) 当該施設における大腿骨近位部骨折後48時間以内に手術を実施した前年の実績について、院内掲示すること。

(8) 関係学会等と連携の上、手術適応等の治療方針の決定及び術後の管理等を行っていること。

(9) 多職種連携を目的とした、大腿骨近位部骨折患者に対する院内ガイドライン及びマニュアルを作成すること。

(10) 速やかな術前評価を目的とした院内の内科受診基準を作成すること。

(11) 運動器リハビリテーション料(Ⅰ)又は運動器リハビリテーション料(Ⅱ)の施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出ていること。

(12) 二次性骨折予防継続管理料1の施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出ていること。

(13) 関係学会から示されているガイドライン等に基づき、当該手術が適切に実施されていること。


年間60症例は、微妙なラインだと思います。一見すると比較的大きな病院であれば楽勝でクリアできそうです。しかし、場末の中小規模病院には届きそうで届かない症例数。


実際、私が勤務している病院ではギリギリ60症例には届かないようです。コロナ禍前にはがんばって当日手術に励んでいましたが、どうやら苦労は報いられないようです...。


まぁ、患者さんの予後改善のために注力していたのですが、今回の加算に症例数の施設基準を付与した意図が分かりません。


まさか、大規模病院に大腿骨近位部骨折患者さんの治療を集約化させるという時代に逆行する考えではないのでしょうが...。





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