先日、激烈な両下肢痛で救急入院した患者さんがいました。既往歴として、ちょうど1ヵ月前に Stanford A型の大動脈解離で、Total arch replacementを施行されています。


症状自体は約 1日で軽快しましたが何だか気持ち悪いですね。整形外科疾患というよりも血管系傷病のニオイがします。しかし、両下肢の循環動態に問題はありません。


そういえば、大動脈解離の術後合併症のひとつに前脊髄動脈症候群があったような気が...。調べてみると確かに合併症のようです。


前脊髄動脈症候群とは、前脊髄動脈の支配領域である脊髄腹側約2/3の領域の梗塞が原因で発症します。脳梗塞と同様に MRIの DWI撮像によって発症早期であっても診断可能です。


しかし、
前脊髄動脈症候群の症状は、突発的で重度の背部痛とその直後から急速に発症する両側性弛緩性麻痺と感覚消失とのことです。


今回の症例は背部痛ではなく両下肢痛であるところが異なりそうです。もし前脊髄動脈症候群であれば、支配領域の疼痛ではなく麻痺症状で発症するはずです。



おそらく今回の症例は前脊髄動脈症候群ではなさそうです。しかし、あまりに痛がっていたので気持ち悪いです。関節外科医的には、脊椎はよく分からないですね...。






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