呼吸不全の大腿骨近位部骨折患者さんの鑑別診断
大腿骨近位部骨折患者さんが搬送されてきた際に、よく遭遇するのが呼吸不全です。特に認知症の高齢者がコケた場合は、かなりの割合でSaO2が低い...。
呼吸不全の患者さんの多くは熱発しています。呼吸不全+発熱なら、診断は肺炎なのでカンタンでしょ!
しかし、ホントに肺炎と言い切れるのでしょうか? 大腿骨近位部骨折患者さんに胸部CTを撮像しても、必ずしも浸潤影を認めるわけではないからです。
当然、血液生化学検査も同時並行で施行します。WBC/CRPが高ければ肺炎が濃厚になりますが、Dダイマーが高い症例も多いのです...。肺塞栓症も鑑別診断に挙がりますね。
それ以外に鑑別するべき疾患は、当然のごとく心不全があります。整形外科医的には肺炎以外では肺塞栓症を心配しがちですが、心不全の方が頻度が高くて重要でしょう。
整形外科的な肺塞栓症の診断法
心不全や肺塞栓症で呼吸不全を併発しているなら、整形外科医では手に負えません。コール・ドクター(笑)な状況ですが、さすがにDダイマーが高いだけで診察依頼できません。
ある程度の確度をもって肺塞栓症を診断する必要があります。しかし高齢者はたいてい腎機能が低下しているので、造影CTはハードルが高い。
ここで登場するのは、心エコーと下肢静脈エコーです。特に心エコーは肺塞栓症や心不全の診断に絶大な威力を発揮します。心エコーでは駆出率や肺高血圧有無を確認します。
心エコーで駆出率OKなら心不全は否定でき、肺高血圧を認めないのであれば肺塞栓症は否定的です。下肢静脈エコーまで実施できて、近位型の DVTが無ければさらに安心ですね。
ほとんどの症例は肺炎
このようなフローで救急外来に搬送されてきた呼吸不全の大腿骨近位部骨折患者さんを診断していますが、なんだかんだ言って圧倒的多数派は心不全や肺塞栓症ではなく肺炎です。
整形外科医の目からみて胸部CTで肺炎像が無くても、プロ(内科医)が診るとしっかり肺炎像が写っていることが多いのです(苦笑)。
いつも目を皿のようにして胸部CTを眺めていますが、いつまで経っても自信をもって「肺炎像は無い」と言えない自分がいます。
このため、たとえ胸部CTで肺炎像が無いと思っても、心エコーで肺高血圧が無く、呼吸不全+熱発+炎症所見が亢進していれば肺炎と診断して治療開始しても良いでしょう。
場末病院のイチ整形外科医の戯言でした。
管理人 お勧めの医学書









さらに重要なのは、骨折→肺炎ではなく、肺炎→フラフラと転倒→骨折、という点ですよね。
コロナが始まってからしばらくは救急初診時にルーチンで胸部CTを撮っていましたが、胸の音を聴診すれば済むので最近はルーチンではやらなくなりました。