ヘルニコアは椎間板機能を温存できる画期的治療法


先日、腰椎椎間板ヘルニアの患者さんから「ヘルニコア」という治療について質問がありました。関節外科医の立場では、ヘルニコアなどという治療法は聞いたことがありません。


ざっくりネットで調べたところでは、ヘルニコアは椎間板内酵素注入療法の一種です。椎間板の髄核にヘルニコアを注入する治療です。


髄核を融解すること椎間板の髄核を融解することで椎間板内圧を減少させ、突出したヘルニアによる神経根への圧を軽減するメカニズムのようです。


従来からキモパパインというタンパク分解酵素を髄核内に注入する治療が存在しました。しかし、キモパパインはタンパク質を分解してしまうので椎間板機能が廃絶します。


このため販売中止になりました。椎間板機能を廃絶してしまう類似の治療として、椎間板ヘルニアレーザー治療(PLDD)があります。これらの黒歴史の治療法と原理は同じです。


ヘルニコアが注目される理由は、タンパク質を分解せずに髄核の保水成分プロテオグリカンのみを分解して保水能を低下させるため、椎間板機能が温存される点にあります。


なるほど、これまでの治療法はすべて椎間板を「殺す」メカニズムばかりでしたが、ヘルニコアは椎間板の機能を温存できることに大きな差異があるようです。



手術療法との比較


一方、手術療法との比較では、その治療成功率は手術療法より低いものの、手術療法に付随する合併症の危険性は低いと考えられています。


すなわち、椎間板ヘルニアに対する治療法の中で「手術療法と保存療法の中間の治療法」と捉えられている治療法です。


ヘルニコアの注意点は、著明な筋力低下を有する症例は禁忌である点です。また、ヘルニコアの治療可能施設は日本脊椎脊髄病学会指導医が常勤する施設に限られているようです。



まとめ


従来のキモパパインやPLDDのように、椎間板機能を廃絶してしまう悲惨な治療法のイメージが強い椎間板治療ですが、ヘルニコアは従来法と異なるようです。


ヘルニコアは日本で開発された新薬であることを加味して、手術療法と保存療法の中間の治療法として普及するとよいですね。







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