乳癌患者さんでは患側でのルート確保は避けるべき


整形外科の手術を施行する際に、既往歴として乳癌手術のある患者さんがときどき居ます。乳癌術後患者さんは、患側でのルート確保は避けるべきと言われています。


先日、右乳癌手術の既往歴のある、左側の橈骨遠位端骨折の患者さんの手術がありました。このような症例では下肢でルート確保することになります。


下肢でルート確保するのはあまり無いので、なぜ乳癌術後患者さんでは患側を避けるべきなのかを調べてみました。


どうやらその理由は乳癌術後のリンパ浮腫と関係があるそうです。乳癌手術で腋窩リンパ節郭清をした場合、上肢からのリンパ液還流のルートが減少します。


このため、患側上肢のリンパ浮腫を併発しやすくなります。そして患側上肢でルートを確保すると、静脈圧を上げてしまいリンパ浮腫の併発や増悪を誘発する可能性があります。


また、ルート確保によって感染を併発するリスクも存在するため、患側でのルート確保は避ける方が無難なようです。



患側上肢での血圧測定、採血、予防接種は禁忌ではない


ルート確保だけではなく、血圧測定、採血、予防接種などの医療行為も受けない方が無難だと言われています。


ただし、これらの医療行為によってリンパ浮腫の併発や増悪するというエビデンスは無いようです。あくまでも「経験則」レベルの話。


このため「なるべく受けない」程度の指導で十分であり、やむを得ない場合には血圧測定、採血程度であれば患側上肢で実施しても問題ないようです。


さすがにルート確保は気持ち悪いので患側上肢は避けた方が無難だと思いますが、エビデンスがある話でもないので、あまり神経質になり過ぎない方がよいのかもしれません。





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