先日、上腕骨近位端骨折の症例がありました。4-part 骨折だったので、骨接合術でいくのか、人工骨頭置換術を選択するのかが悩みどころです。
私は股関節外科医のなので人工関節大好き人間に思われがちですが、実は人工物は嫌いです(笑)。大腿骨頚部骨折であっても、できるだけ骨接合術を選択します。
しかも肩関節は非荷重関節です。多少変形癒合しても下肢ほどには問題になりません。面倒だけど骨接合術でいくかなと考えていると、ふと上腕骨頭は後捻だと思い出しました。
- 大腿骨:前捻
- 上腕骨:後捻
上記の解剖は整形外科医的には常識ですが、何か違和感を感じませんか? そう、長管骨としての形状を考えると、両方とも同じ方向に骨頭が位置するのです。
大腿骨、上腕骨とも骨頭の位置は伸展側です。よく考えると、人間はもともと4本脚歩行でした。それが進化して2本脚歩行になったワケですが、長管骨の形状までは変わりません。
このため、大腿骨・上腕骨とも骨頭の位置は伸展側です。考えてみれば当たり前のことですね。ヒトの2本脚歩行能力獲得期間よりも長管骨の形状変化の方が時間がかかります。
それでは、そもそも論として「前捻」「後捻」とは一体何なのでしょうか? 私の理解では、長管骨を基準として骨頭が身体の前にあるのか後ろにあるのかの違いです。
大腿骨の骨頭は身体の前(=腹側)にあります。一方、上腕骨では骨頭は身体の後ろ(=背中側)です。長管骨としての形状は同じものの、2本脚歩行では基準が異なるようです。
今更ながらですが、解剖の名称ってややこしいですね。実際に手術をする際には「両方とも同じ形状だ」と体感しておくと良いと思います。
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