2019年の日整会で、鳥取大学の荻野浩先生の『骨粗鬆症性椎体骨折の治療 診療マニュアル作成の試み』という教育研修講演を拝聴しました。この講演の要諦は下記のごとくです。
- 骨粗鬆症性椎体骨折の治療では外固定の種類と治療成績に有意差は無い
- 骨粗鬆症性椎体骨折の治療では外固定の有無と治療成績に有意差は無い
- 骨粗鬆症性椎体骨折の治療では受傷後の安静期間と治療成績に有意差は無い
上記の結論は、たくさんの論文をベースにしたCQに対する回答です。今更ながら、整形外科医としては衝撃的な内容です。
何といっても、整形外科の圧迫骨折に対する標準的保存治療(?)が全否定されているのですから...。しかし世の中の趨勢は EBMです。
この流れが変わることはないでしょう。ということは、10年ぐらいすると圧迫骨折に対する標準的保存治療では、コルセットは簡易型でも問題なしということになるかもしれません。
何といっても、整形外科の圧迫骨折に対する標準的保存治療(?)が全否定されているのですから...。しかし世の中の趨勢は EBMです。
この流れが変わることはないでしょう。ということは、10年ぐらいすると圧迫骨折に対する標準的保存治療では、コルセットは簡易型でも問題なしということになるかもしれません。
このことは医療財政にも追い風です。これまで実施していた高価な保存治療にはあまり意味がなく、簡易コルセットでも圧迫骨折の治療効果に差はないことになりますから。
しばらく忘れていましたが、最近になって「骨粗鬆症性椎体骨折の治療では外固定の種類と治療成績に有意差は無い」「外固定の有無と治療成績に有意差は無い」を思い出しました。
EBMが更に進化すると、圧迫骨折でフレームコルセットやダーメンコルセットを処方すると、ダメ医者のレッテルを貼られる可能性すらあります。
現時点でもエビデンスの無い話です。それにもかかわらず高価な外固定を処方し続けるのはどうかと思います。それって「私は不勉強なアホです」と告白するのと同じですから。
コロナ禍で医療は国家に更なる負担をかけました。私たちが能動的にコロナ禍の過剰医療を推進したわけではありませんが、片棒を担いでいるのは紛れもない事実です。
せめてエビデンス皆無の治療は中止することが望ましいのではないでしょうか。特に圧迫骨折の外固定では、義肢装具士に暴利を貪らせる必要はないと思います...。
管理人お勧めの医学書
オーストラリア理学療法協会のスポーツ理学療法士による実践的な教科書です。
治療的テーピングの概要を学ぶことができます。
介入であるコルセット治療の定義(材質や大きさ、指示する装用期間と実際の装用期間などなど)が非常に曖昧ですし、アウトカムも曖昧ですので検証が非常に難しいです。ですから、有意差がないのは、実際に差がないのかもしれませんが、本当に差があったら有意差がでるようなキチッとしたらデザインになってなかった可能性も十分あります。また、患者もその特徴で効果がない層と、効果が期待できる層に分かれる可能性もあります。
ですから、EBMに則って考えると「標準治療としては推奨されない」ものの、「自身の経験と信念に則って必要と考えられる場合、使用は肯定されないが、否定する根拠も乏しい」治療になります。
このような曖昧な治療を保険でカバーするのは意味不明ですし、何でもかんでもコルセットを作成する現状は異常です。ただし、この人には使った方がよさそう!と思う場合は使ってもよいかと思います(保険診療でやるのは本来おかしいですが)。
昨今EBMは、一歩前進したPersonalized Medicineという考え方に変わりつつあります。集団の平均効果をみるEBMを目の前の患者に当てはめるのはそもそも無理があるので、目の前の患者のリスクを評価して、患者ごとに最適な治療を提案すべきだ!という考えです。適切なPMができるような、質の高いエビデンスが求められております。
長文大変失礼いたしました...
公開していただかなくとも結構でございます。
いつも楽しみに拝見しております。