最近では、クリニックでも MRIを導入する施設が増えてきました。「MRI導入済み」は大きな宣伝になりますし、何よりも収益面での貢献も大きい。
しかし、私たち病院勤務医の立場では、ちょっと困ったことが多発するようになりました。それは、クリニックの MRIは性能の悪い機種が多いことです。
例えば 0.3Tの MRI。オープン型という売り文句と磁場が小さく設備負担も小さいことがメリットです。施設面積に限りがあり、設備投資を抑えたいクリニックとの相性はバツグン。
しかし、0.3Tの MRIの画質は当然のごとく悪いです。例えば肩関節では、正常なのか異常なのかの判断自体さえ難しいシロモノです。
腱板損傷との触れ込みでクリニックから紹介されてくる患者さんを診察する機会がありましたが、確信をもって診断できるレベルの画像ではありません。
身体所見も微妙な感じだったので、やむを得ずもう一度撮像することになりました。実はこのような症例は稀ではありません。
医業収益アップのために、とにかく MRIを施行して、何か所見がありそうなら病院に紹介するというスキームは、医療資源の無駄遣い以外の何者でもないのではないでしょうか。
客観的にみて、0.3Tの MRIと通常の1.5T以上の MRIでは別物です。現状でも磁場強度別による診療報酬体系になっていますが、傾斜配分が甘いと言わざるを得ません。
粗悪な MRI増殖による医療費の無駄遣いを抑えるためにも、1.5T未満の機種の診療報酬をさらに引き下げる等の政策誘導が必要ではないでしょうか。
管理人 お勧めの医学書
お話がブレてしまいますが、私の近隣では整骨院から画像をメインに開業しているMRI設備あるクリニックに紹介。MRI検査結果と読影所見持参で整骨院戻し。
施術数ヶ月で治らないと、私たち整形外科に紹介。という流れがいくつか散見されます。
読影所見も、あくまで画像だけの判断ですし、運動器に特化した放射線科医師など稀有な存在です。
特にお話に出た肩関節腱板断裂などは、微小な断裂から時間経つと断裂範囲が拡大もしているのでやはり再度検査し直しです。
今後こういった症例のトラブル、また質の悪いMRI検査の後の2度目の同じ検査の保険査定などの対応は10年後に持ち越しでしょうかね。