ひと昔前は、若年者の特発性大腿骨頭壊死症に対して人工骨頭置換術を施行していました。ところが周知のように術後成績は良くないです...。
股関節部痛が残存してしまう症例が多く、寛骨臼側が人工物に置換されていない弊害が指摘されています。このため、特発性大腿骨頭壊死症では THAが標準治療になりました。
これと同じ考え方で、高齢者の大腿骨頚部骨折でも寛骨臼側も人工物に置換した方が良いのではないかという議論が一時期流行りました。
論理的に考えると、高齢者と言えども人工骨頭置換術では股関節部痛が残存しそうです。このため、高齢者の大腿骨頚部骨折に対して THAを施行することが一時期流行りました。
ところがその後はあまり話を聞かなくなりました。実際に高齢者の大腿骨頚部骨折に対して THAを施行すると、さまざまなトラブルが発生するからです。
代表的なトラブルは、寛骨臼側のカップの固定不良でしょう。正常の寛骨臼なので、一見するとカップ固定は容易に見えます。ところが実際にやってみると難しい。
その理由は、変形性股関節症のように硬化していないので、軟骨下骨を越えてリーミングすると急激に固定性が低下するからです。しかも、大腿骨頚部骨折を起こすぐらいの粗鬆骨。
身の回りにもカップの固定性を得られずにセメントカップを使用せざるを得なくなった症例がありました。セメントレス派にとっては厳しいですね。
また、易脱臼性の問題もあります。もともと正常股なので可動域制限が無いことと、認知症を併発している患者さんが多いことが要因です。
今回の論点は、一見ロジカルに見えることも、実際にやってみると使えないことが多いことの一例でしょう。医療は難しいですね...。
管理人 お勧めの医学書
初学者がTHAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です

人工股関節全置換術
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