今日は炎上する可能性のある話題です。私は、整形外科医はもっとインオペ(手術不能、手術を回避する)に積極的になっても良いのではないかと考えています。


その理由は、昨今の超高齢社会の影響です。90歳以上が珍しくなくなりましたが、その弊害は整形外科の日常診療にも押し寄せています。


その一例として、90歳以上でほぼ寝たきりに近い患者さんの下肢骨折増加です。超高齢者で寝たきり患者さんの下肢骨折は、高度の骨粗鬆症を併発していることが多いです。


端的に言うと、骨折部を内固定しようが無い、もしくは脱転するリスクがとても高い症例です。このような患者さんは珍しくなく、いつも外来で頭を抱え込んでしまいます。


数ヵ月前にも大腿骨骨幹部で派手な短斜骨折をした患者さんが搬送されてきました。意思疎通さえ困難で、おそらくオムツ骨折です。


このようなケースで患者さんの骨を折った職員が名乗り出ることはまずありません。そんな患者さんを治療するのは大変。下手に手術すると社会的リスクまで抱え込みます。


私は高度過ぎる骨粗鬆症や高度の関節拘縮を併発している患者さんには、あえてインオペを選択します。基本的にはシーネ等のなんちゃって外固定をして施設に帰ってもらいます。


施設の職員さんは仰天しますが、そこのところは自施設で責任持って貰わねば...。しかし、若年者では絶対に骨癒合してないであろう骨折でも意外と骨癒合します。


ほとんど骨折部がコンタクトしていない大腿骨骨折も3ヵ月程度で見事に骨癒合しました。もともと関節拘縮しているので、骨折による実害はほとんどありません。


このような症例に手術を強行すると、おそらくロクなことが起こらないと思われます。整形外科医のサガとして、骨折を診たら手術して固定せねばという義務感に苛まれます。


しかし、治療の目的は安全に治癒させることです。手術はあくまでも選択肢のひとつでしかありません。強迫観念に駆られることなく、インオペを積極推進しようではありませんか。






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