骨折をみたら手術を検討する、脱臼をみたら徒手整復する。このような思考パターンは整形外科ではお馴染みですね。
だいたい猪突猛進するのが整形外科医の特徴ですが、何も考えずに突っ込んでいるとときどき大変な目に遭うことになります。
その代表例のひとつは、脳梗塞後の肩関節脱臼ではないでしょうか。片麻痺が発生すると、いつの間にか肩関節が脱臼していることが多いです。
胸部X線像で偶然見つかるパターンもあります。このような症例に対して「徒手整復だ!」とすると思わぬ失敗をしでかす可能性があります。
脳梗塞後の肩関節脱臼はいつの間にか脱臼しているので、徒手整復が難しいケースが多いです。脱臼から日が浅くて整復できたとしても、またすぐに脱臼します。
そして拘縮(瘢痕形成?)が完成している脳梗塞後の肩関節脱臼症例に対して、無理矢理徒手整復しにいくと、脆弱化した上腕骨が折れてしまうことも...。
そもそも脳梗塞後の肩関節脱臼は痛みがありません。整復する必要さえ無い症例に、レントゲンコスメティックを追求して不要な徒手整復をするとロクなことがありません。
脳梗塞後の肩関節脱臼症例は、そっと見守るのが吉だと思います。この場合の問題点はご家族への説明です。
徒手整復するメリットが無いこととデメリットが大き過ぎることを丁寧に説明すれば、たいていの人は納得してくれます。ゆめゆめ猪突猛進しない方が良いでしょう。
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