最近では、人工関節全置換術において術前の自己血貯血を実施する割合が低下していると思います。私が医師に成りたての時代は、ほぼ全例自己血貯血していたものです。


さて、そんな世間の風潮の中でも、私は相変わらず可能なかぎり自己血貯血しています。その理由は、自己血を「気付け薬」とみなしているからです。


術後にルーチンで自己血を返血することで貧血が改善されるため、多少なりとも術後感染や内科的合併症併発のリスクが低下すればいいなと。


さて、毎週のように自己血を採取していますが、貯血が難しい人が一定割合で存在します。しかし、自験例ではほぼ全例で貯血できています。


そのコツは「気合い」なのですが、やはりそれなりのコツもありそうです。貯血の難しい患者さんは、静脈が奥深くて細い人が多いです。


その血管を探し当てて針を当てるワケですが、左示指先端をイソジン消毒して血管を直接触知しながら刺入しています(私は右利きです)。


爪の下の指先で血管を触り、そこに向けて針先を進めるイメージです。血管内に入ると少しだけ陰圧となり、針先が吸い込まれる感覚が僅かにあります。


この感覚を求めて、やや緊張しながら針先を進める作業を行っています。ここで失敗すると、主治医の威信にかかわると思いながら(笑)。


自己血貯血が困難な患者さんは、ご自身が採血が難しいことを理解されています。このため一発で成功すると、主治医に対する信頼度がアップする効果も期待できます。








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