先日の外来で2年ほど前から右肩を挙上できなくなったという80歳台女性が初診されました。 特に外傷の既往はないのですが、右手が挙がらないようです。
そりゃ、フツーに腱板変性断裂でしょ。とりあえずレントゲン検査しましょうと言ったところ、家人が右肩の骨が出っ張っているとおっしゃられました。
骨が出っ張っている? よくよく見ると、確かに右肩のボリュームが小さい気がします。服を脱いでもらうと驚きました。三角筋の後方成分がごっそり無くなっているのです。
診察すると、右肩の伸展・外転のみ MMT 2程度です。肘関節屈曲以下の運動麻痺や知覚障害は一切認めませんでした。また、下肢痙性も認めません。痛みやしびれも無いようです。
単純X線像では、C5/6で椎間板腔の狭小化を認めます。しかし、Spurling test や Jackson test は陰性です。消去法的にkeegan型頚椎症性筋委縮症と診断できるのかも...。
さしあたって、筋電図検査と頚椎MRIを予約しました。現時点ではkeegan型頚椎症性筋委縮症は確定診断ではありません。
私は、このような患者さんを何名か診察したことがありますが、いずれも1~2ヶ月で自然治癒しました。しかし、今回の患者さんは機能改善するとは思えません。
2012年の日本整形外科学会学術総会で、山口大学の田口元教授が、keegan型頚椎症性筋委縮症の治療について講演されていました。
さしあたって、メチコバールを処方しつつ、頚椎MRIや筋電図検査等を施行する予定です。それで何もなければ神経内科に相談ですね!
自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。