先日、鎖骨骨幹部骨折の治療で悩みました。患者さんは30歳代の独り暮らしの勤め人で忙しくて、それなりに身体を使う職業です。独りでは、クラビクルバンド装着が難しそうです。


鎖骨骨幹部骨折の治療は、保存療法と手術療法に大別されます。教科書的には保存療法で良好に骨癒合すると記載されています。しかし、実際には割と偽関節化する印象があります。


特に骨片間が整復後も接触していないと、偽関節化する可能性が高まりそうです。このような人には、やはり手術療法をお勧めするしかないでしょう。


しかし、現実的な話として、1週間ぐらいは職場から戦線離脱することになります。そんな長期間(?)仕事を離れられないという人は意外と多いのです。


その方には以下の点を提示しました。
  1. 保存療法なら、クラビクルバンド6週間程度は常用する必要がある
  2. 肩のラインより上に手を挙げてはいけない
  3. 重い物を持ってはいけない
  4. 禁煙


禁煙はともかくとして、私でも上記の①~③は難しそうな印象を抱きました。しかも偽関節化すると手術自体がやっかいになります。


かなり悩んだようですが、最終的には保存療法を選択されました。主治医としては少々辛い状況です。何故なら、鎖骨骨幹部骨折はなかなか仮骨が見えてこないからです。


経験的には6週間近く化骨が見えないことも稀ではありません。これから外来で気を揉みながら診ていく人がまた一人増えてしまいました...。







管理人 お勧めの医学書


整形外科医なら誰もが所有している骨折治療のバイブルです。豊富な図や画像が提示されており、骨折手術におけるAOの考え方や基本原則を学べます。