医師の起業は珍しくなくなった
私が事業法人を運営し始めた2012年は、まだまだ医師起業家の存在はマイナーでした。なぜ確実性の高い開業ではなく起業なの？という当然の疑問をたくさんいただきました。
もともと不動産投資を手広くやっていたので、周囲の感覚は「また変わったことやり始めたな」ぐらいでしたが、当の本人は大真面目です。
なんとしてもスケールして上場まで持っていく！ という、今にして思えば世間知らずにも程がある夢を真剣に抱いていました。
勢いで始めた起業も営業能力不足でスケールできず、結局廃業しました。しかし、起業の面白さを味わった私は、懲りずにいろいろな新規事業を立ち上げて現在に至ります。
そして周囲の環境も驚くほど変化しました。何と言っても最大の変化は、起業する医師が全然珍しくなくなったことです。
スモールビジネスからスケールを狙ったスタートアップまで、私の周囲の医師で起業している人は両手の数では足りません。それほど医師にとって起業は身近になったのです。
ほとんどの起業は失敗に終わる現実
しかし、現実は厳しいです。彼らのほとんどは満足に売上も立たずに苦労しています。医師という本業が無ければ事業継続が難しいケースが大半です。
逆に言うと、医師という鉄板の収入があれば、チャレンジングな起業にも臆することなく挑戦できると言えます。日本で最も起業しやすい属性は医師なのかもしれません。
私自身も経験あるのですが、起業が失敗する最も大きな理由はニーズ不足です。机上の理論や個人的な体験で思いついた起業アイデアのほとんどは真剣なニーズではありません。
「あったらいいな」程度のニーズでは、事業は成り立たないことは肝に銘じておくべきでしょう。起業してよいのは「無くてはならない」ニーズなのです。
照準を大法人格にセットせよ
世の中に「無くてはならない」ニーズはそれほど転がっていません。しかし四六時中探し続けていると、時々そのようなホットなニーズを発見することがあります。
その時に全力で起業できるか否かが成功の分かれ道になります。そして、事業をスケールさせるには、BtoCはハードルが高いです。
何故なら、BtoCでスケールするには資本と仕組化が必要だからです。もちろん最初は小さく始められますが、売上が大きくなるにつれてオペレーションの難易度が高まります。
一方、当初はBtoCで初めても、スケールを考え始めるとBtoBに舵を切る方が効率的なケースが多いです。私が現在取り組んでいる事業も、そのような経過を辿っています。
そして、BtoBの中でも、ステージが進むにつれて、より大規模な法人にシフトすることが理想です。取引先の規模が大きいほど売上と利益率の両方を高めることができるからです。
大法人格との取引のメリットは、高めの費用を提示しても了承してくれる可能性が高い点にあります。私はチキンなので、どうしても安い価格を提示しやすいです。
しかし、相手が大法人格相手であれば、私が「高い」と思っていた価格でも「安いですね～」という反応が返ってきた経験が一度や二度ではありません。
大法人格との取引のメリットは、信用力の補完にもなります。利益率と信用力の両方が上がるので美味しいところだらけです。
しかし、一般的にはもちろん大法人格との取引はハードルが高いです。彼らは取引を開始する前に、こちらの信用調査を徹底的に行います。
以前、自社HPで極めてマイナーなコラム記事とその関連サイトのアクセスがアップしたことがありました。その1週間後に日本を代表する某企業からの依頼が直接舞い込みました。
依頼内容は、アクセス数が急増したコラム記事そのものでした。なるほど、身辺調査が行われたのだなと得心しました。
一度、大法人格の懐に入り込むと、芋づる式に依頼を受けるケースが多いです。このため、起業の最終目的地は大法人格との取引に照準を合わすべきでしょう。
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