またまた THAネタで恐縮です。
最近、手術というと人工関節置換術しかしていません。
モノカルチャーな文化もどうかと思いますが、これはこれで楽で良いものです。ただし、今回の症例では予想外に難渋してしまいました...。
その症例とは、強直していて股関節可動域がほとんど無い患者さんです。もちろん骨性に強直しているわけではないので、単に疼痛のために可動域がほぼ無いのだと思っていました。
ところが全身麻酔下でもほとんど股関節が動かないではないですか! 外転方向に動かないのはよく見かけますが屈曲方向にもビクともしません。これ、ちょっとヤバいかも...。
まぁ、軟部組織をリリースすれば問題なく脱臼できるだろう。安直過ぎました。内部は再手術症例ほどではないですが癒着がキツイです。あれ?プライマリー症例だよな。
全く股関節を屈曲・内旋できないまま、なんとか股関節に到達します。かつて経験したことの無い事態に少し焦ります。そして関節包を切開してもあまり可動域に変化がありません。
もちろん多少は動くのですが、ほとんど内外旋できないので脱臼どころの話ではない。何故こんなに可動域が出ないんだ?後方、上方、下方とも関節包を切離したのに動かない。
いったい何故? CTを確認すると寛骨臼前方に巨大な骨棘があります。しかも大腿骨頭には大きなキャピタルドロップが。どうやら骨性要素が原因で動かないようです。
仕方ないので大腿骨頭のキャピタルドロップを切除することで、寛骨臼内で多少動くようになりました。大腿骨頭をピースバイピースで切除しながら少しずつ可動域を獲得します。
後追いで考えても、ダブルカットで頚部を切除できるスペースさえありません。あぁ恐ろしい。脱臼させるだけでも1時間近くかかったので、2時間超の大手術になりました(苦笑)。
寛骨臼が骨硬化し過ぎておりカップが固定できなかったり、大腿骨近位部が脆くてセメントステムにコンバージョンしたりと散々な目に遭いました。
今回得た教訓は、寛骨臼前後の巨大骨棘+大腿骨キャピタルドロップがあって、ほとんど股関節の可動域が無い症例では、脱臼困難な場合があるということでした。
このような症例では、焦らずに寛骨臼の骨棘を切除したうえで、大腿骨頭のキャピタルドロップを切除して脱臼させるのが吉なのでしょう。
管理人 お勧めの医学書
初学者がTHAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です

人工股関節全置換術
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