ときどき見かける大腿骨頚基部骨折は、大腿骨転子下骨折(reverse oblique)と同様に少し身構えてしまう骨折型のひとつです。身構える理由は、両方とも骨癒合しにくいからです。
大腿骨頚基部骨折が骨癒合しにくい理由は、骨折線が荷重方向とほぼ平行であることです。荷重時に骨折部に圧迫力が加わらず、剪断力のみが加わります。
このあたりは、reverse obliqueタイプの大腿骨転子下骨折と同じですね。更に大腿骨頚基部骨折は、骨折線が関節包内外にまたがります。
大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン では、大腿骨転子部骨折の治療に関しては、sliding hip screw (CHS)と short femoral nail の両者を推奨しています。
しかし大腿骨頚基部骨折では、sliding hip screw のみが推奨されています。大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドラインには、short femoral nail を非推奨の理由が記載されていません。
多くの整形外科医の間では、大腿骨頚基部骨折では sliding hip screw を選択するべきというコンセンサスだと思われます。
sliding hip screw を選択する理由は、大腿骨頚基部骨折でshort femoral nailを選択すると、ネイルが骨折部に来るため骨片間の接触面積が小さくなるからです。
このため、short femoral nailでは偽関節化する危険性が高まります。最近では、CHSを施行する機会が減りましたが、大腿骨頚基部骨折ではCHSを選択することが望ましいでしょう。
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