TKAでは高率に伏在神経膝蓋下肢を損傷する
伏在神経膝蓋下肢は、膝蓋腱前面の皮下を内側から外側に向かって斜め下方に走行しています。このため、TKAの侵入時に高率に伏在神経膝蓋下肢を損傷してしまいます。
伏在神経膝蓋下肢損傷の症状は、膝前面から外側にかけての鈍痛です。皮膚切開の部位に一致して、そこから外側にかけての疼痛が残存します。
【参考】
伏在神経膝蓋下肢損傷で膝外側しびれ?!
神経損傷なので、しつこい疼痛でなかなか軽快しません。もちろん術前の膝関節そのものの疼痛と比較すると軽度です。しかし跪き動作の際に、やっかいな疼痛を惹起しがちです。
伏在神経膝蓋下肢損傷の対策
伏在神経膝蓋下肢損傷を確実に防ぐ方法はありません。しかし、障害をできるだけ軽くする方法は存在します。その方法は、手術時の工夫と術後の薬物療法に分けられます。
まず手術療法ですが、伏在神経膝蓋下肢を切離する部位をできるだけ外側にする工夫があります。それはずばり皮膚切開の部位を外側寄りにすることです。
【参考】
TKAの膝蓋前外側皮切は成績良さそう!
膝蓋前外側皮切で伏在神経膝蓋下枝損傷を回避する
皮膚切開部位を外側にすることで、膝関節前面の疼痛を訴える患者さんが減少した印象を抱いています。しかし、よく聞いてみると膝関節外側の痛みを感じている人が多い...。
たしかに皮膚切開部位は外側に移動したため、正中は正常解剖です。このため跪き動作での疼痛はかなり緩和されました。しかし、外側痛に関しては解決できていないです。
この疼痛を軽快させるのがプレガバリン製剤です。自験例では、伏在神経膝蓋下肢損傷に対してプレガバリンが著効する印象を抱いています。
膝関節外側痛の疼痛で困っている患者さんにタリージェなどを処方すると、低用量でもとても喜ばれるケースが多いです。
なるほど、TKA術後の正体不明の疼痛だと思っていたのは、実は伏在神経膝蓋下肢損傷による神経痛が多く含まれていたようです。
まとめ
TKA術後には手術に起因する伏在神経膝蓋下肢損傷による膝関節前面痛を併発しがちです。これを避けるには手術の皮膚切開位置の工夫とプレガバリン製剤処方が望ましいでしょう。