先日、50歳台男性の頚椎MRIを撮像したところ、C5/6より末梢の頚髄に、T2WIで紡錘状の高信号領域の領域を認めました。
キアリ奇形は、小脳が下の方にある脊髄側に生まれつき落ち込んでいます。MRIを見ると一目瞭然なのですが、今回の症例ではキアリ奇形は無さそうです。
そして教科書を紐解くと、脊髄空洞症の原因で最も多いのはキアリ奇形だそうです。私はこれまで何例かの脊髄空洞症をみてきましたが、いずれもキアリ奇形はありませんでした。
私が診てきた症例では、脊髄空洞症の中枢端の高位に、結構大きめの頚椎椎間板ヘルニアがあって頚髄を圧迫している症例が多い印象を受けています。
このため、私の中では脊髄空洞症の原因として、キアリ奇形よりも頚椎椎間板ヘルニアの方が多いのではないかという疑念があります。
キアリ奇形は脳神経外科領域の傷病なのでしょうが、整形外科医の私でも、さすがにキアリ奇形を見落とす可能性は低いでしょう。
原因不明の脊髄空洞症で神経障害などの症状がある場合には、空洞—くも膜下腔シャント術の適応になります。
しかし、頚椎椎間板ヘルニアに脊髄空洞症が合併している症例では、前方除圧固定術などで脊髄への圧迫を取り除くと脊髄空洞症の空洞が軽快するのでしょうか???
自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。