超高齢者の上腕骨顆上骨折の治療では、手術療法と保存療法の選択で苦慮するケースが少なくありません。先日、90歳の患者さんで、転位の少ない右上腕骨顆上骨折がありました。
いくら転位が少ないと言っても、若年者であれば確実に手術療法を選択します。かなり迷ったのですが、手術のメリットとデメリットを天秤にかけて保存療法を選択しました。
経過の途中でどんどん転位が大きくなっていきます。これは、治療法の選択を誤ったか...。最終的にはおそらく偽関節化しました。単純X線像は酷い有様です。
しかし、当の本人は痛みを感じておらず、普通に右手で杖を使っています。しかも肘関節の可動域は、120-20-0と僅かに伸展制限を残すものの、かなり良好な成績です。
また。骨折部を触りながら肘を動かしてもらっても、特に偽関節部に轢音等を蝕知しません。画像所見は酷いですが、患者さんの満足度は極めて良好でした。
おそらく、手術療法を施行しても、ここまで治らない可能性が高いと考えています。結果的には保存療法で問題なかったようですが、次に同じ症例が来ても保存療法を選択するのか?
おそらく、また今回と同じように悩み抜くことでしょう。そして必ずしも、保存療法を選択するとは言い切れないと感じています...。
管理人 お勧めの医学書
整形外科医なら誰もが所有している骨折治療のバイブルです。豊富な図や画像が提示されており、骨折手術におけるAOの考え方や基本原則を学べます。