先日、かなり手関節面に近い部位の橈骨遠位端骨折がありました。CTで計測すると、Watershed lineより近位は 7mm程度しかありません。
橈骨遠位端骨折の掌側プレートは MIZUHOの HYBRIXを使用していますが、今回のような症例では通常タイプではなく HYBRIX-Dのような遠位設置型プレートが検討されます。
HYBRIX-Dのような遠位設置型プレートの絶対適応は Rim fractureです。しかし今回のような微妙な症例では近位設置型・遠位設置型の両者とも適応があります。
長母指屈筋腱損傷を嫌うのであれば近位設置型ですし、強固な固定優先であれば遠位設置型です。どちらにするのかを迷ったので、HYBRIX開発者の先生のひとりにお伺いしました。
この先生がおっしゃられるには、condylar stabilizing 法を実施するか否かで判断するべきとのことでした。つまり、CS実施なら遠位設置型プレート、しないなら両者とも可です。
長母指屈筋腱損傷が嫌ですが、やはり周術期の安全性を考えると遠位設置型プレートに軍配があがります。一方、第一列はいずれの場合にも screwではなく pin推奨とのことでした。
素人目には screwの方が強固に固定されそうに思えますが、実際には固定性に差異は無いそうです。にもかかわらず、screwは関節面をカットアウトするリスクが高いとのことです。
ここまでをまとめると、遠位骨片が Watershed lineより近位 7mm程しかなければ、遠位設置型プレート+第一列は pinで CSを実施するのが無難であろうとの結論でした。
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