先日、局所麻酔下に手根管開放術を行いました。
手術時間は15分程度だったので、トータルで30分ほど清潔状態だったと思います。
術後にシーツを除去すると、患側の肩関節背側にイソジンがこびりついていました。ハイポアルコールで拭いても皮膚の色が落ちません。
むむっ、これは例の「イソジン焼け」ではないのか? イソジン焼けでは、皮膚にイソジンの色素が沈着してしまい、術後にハイポアルコールで拭いても皮膚の色が落ちないのです。
イソジン焼けは、術前消毒に用いられることが多いイソジン(ポビドンヨード)やヒビテン(クロルヘキシジングルコン酸)などに対する接触性皮膚炎です。
以前に、何らかの形で同種の消毒剤を用いたことで感作が成立した患者は、消毒剤使用部に限局して化学熱傷(俗にいうイソジン焼け)を生じてしまいます。
一度感作が成立した患者さんでは、イソジン焼けを完全に予防することは難しいですが、患肢の下のイソジンの溜まりに皮膚を触れさせないだけでもある程度の予防効果があるようです。
それほど稀では無いのですが、意外と原因が分からない皮膚炎として扱われていることが多い印象を受けます。そして特に、上肢の手術ではイソジンによる化学熱傷に注意しています。
私は、タオルを肩の下に敷いてイソジンが溜まりにならないようにしています。そして、清潔シーツを掛ける直前にイソジンを吸い込んだタオルを除去するのです。
タオルの代わりに、より吸水性の高いオムツなどを代用している施設もあるようです。それでも化学熱傷が発生してしまった場合には、通常の熱傷に準じて治療を行うことになります。
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