先日、人工股関節全置換術(THA)がありました。
THAやTKAでは両側とも手術を施行せざるを得ない患者さんが多いです。
先日の方も反対側は既にTHAを施行済みでした。このようなケースは反対側に設置されているインプラントサイズを参考にすることが多いですが、ピットフォールも同じであることが多いです。
例えば、ZIMMERのkinectivではネックのバリュエーションが豊富(過ぎ)です。そして、「K」等の脚長が短くなるネックは骨頭サイズによってはインピンジの原因となります。
したがって、できれば「K」等の短いネックは避けたいところですが、反対側で既に「K」が設置されている症例ではかなり注意しても、結局今回も「K」になってしまうことが多いです。
この理由はおそらく患者さんの骨格の問題なのだと考えています。もちろん、ステムをワンサイズ小さくすることで強引に「K」を回避することは可能ですが、ステム沈下の危険性が高まります。
術中にピットフォールに陥らないように普段通りの手術を施行すると、結局反対側と同じインプラントになることが多いです。
このように考えると前回手術がやや極端なインプラントの選択であっても、やはり反対側のインプラントは非常に参考になると考えるのが妥当かなと感じています。
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人工股関節全置換術
インプラント
平成27年7月15日発行の日整会広報室ニュース(第102号)に興味深い記事があったので、ご紹介させていただきます。「眠っているインプラントはありませんか?」です。
広報室ニュース97号での呼びかけに応じて、2014年5月から12月までに整形外科関連のデバイスやインプラントが26施設から集まったそうです。
内訳はスクリュー7000本、エンダー釘1000本、プレート750本、キルシュナーワイヤー400本、患肢2500本、鑷子300本などの合計6000万円相当にも上ります。
これらのデバイスやインプラントは、東南アジアやアフリカの合計14カ国に寄付されるそうです。東南アジアではベトナム・ラオス・ミャンマー・スリランカ・パキスタン・ブルネイに送られました。
サイズが重要であるインプラントがどのような使われ方をするのかは分かりませんが、これらの国では庶民には高価なインプラントがなかなか手に入らないのかもしれません。
それにしても、このようなアイデアを発案して実行された三重大学国際医療支援センター長の笠井裕一先生はすごいなと思いました。
確かに私の勤める病院の手術室の倉庫にも、お蔵入りして日の目を見ることは無いであろう古いタイプのインプラントがたくさんあります。これらは、将来的に破棄される運命にあります。
しかし、(日本では)古いタイプのインプラントとは言え、世界にはそれを必要としている人がまだまだたくさん居ることを忘れてはいけないことを気付かせてくれました。
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数日後に骨折の手術予定の方ですが、既往に金属アレルギー(?)があります。以前から貴金属製のネックレスをすると皮膚がかぶれるそうです。
俗に言う”金属アレルギー”は、金属が直接アレルギーを起こすのではありません。金属から溶出した金属イオンが人体のタンパク質と結合して、アレルゲンとなるタンパク質に変質させます。
今回使用予定の内固定材料はチタン製です。一般的にチタンは最も金属アレルギーを惹起しにく素材ですが、金属アレルギー惹起の可能性があるプレートを選択するわけにはいきません。
以前、金属アレルギーのある患者さんにTHAを施行する際に、Smith & Nephew社にインプラントで使用されている金属粉を提供してもらいました。
それ以来、金属アレルギー疑いの方には使用インプラントのメーカーに金属粉の提供を依頼してパッチテストを行うことにしています。これを背部などに貼付して2日後(48時間後)に判定です。
パッチテストで問題無ければ安心してプレートを使用することができます。金属アレルギーの可能性がある方には、器械メーカーに金属粉を提供してもらいましょう。
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