数日後に骨折の手術予定の方ですが、既往に金属アレルギーがあります。以前、歯の詰め物を挿入した際に全身に高度の発疹が出現したそうです。
詰め物を抜去後に軽快したので、金属アレルギーとしては本物である可能性が高いです。患者さんにその処置をした歯科医院に素材について問合をしてもらったところ既に廃業していました。
今回使用予定の内固定材料はチタン製です。一般的にチタンは最も金属アレルギーを惹起しにく素材ですが、金属アレルギー惹起の可能性があるプレートを選択するわけにはいきません。
少し悩みましたが、妙案を思いつきました!以前、金属アレルギーのある患者さんにTHAを施行する際に、Smith & Nephew社にインプラントで使用されている金属粉を提供してもらったのです。
インプラントの金属粉さえあれば、簡単にパッチテストを行うことが可能です。早速、器械メーカーに依頼してプレートの金属粉を手配しました。これを背部などに貼付して2日後に判定です。
パッチテストで問題無ければ安心してプレートを使用することができます。属に言う”金属アレルギー”は一次刺激性接触性皮膚炎であることが多いので今まで見て見ぬフリをしていました。
しかしこれからは、金属アレルギーの可能性がある方には、器械メーカーに金属粉を提供してもらって積極的にパッチテストをしようと思います。メーカーから金属粉をゲットするところがポイントです。
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チタン
先日、海外で骨折の手術を受けた方の抜釘を行いました。単純X線像で、使用されている内固定材料はシンセスのロッキングプレートであることは予想されました。
しかし、念のためその病院にe-mailで問合せをして型番を確認して手術に望みました。実は返信にあったスクリューの型番が200番台だったので、情報の信憑性を少し疑っていました。
その理由は、シンセスの200番台のスクリューはステンレス製だからです。チタン製であれば400番台のはずなのですが、少なくとも日本国内で販売されているシンセスのロッキングスクリューにステンレス製は無いです。
メーカーの戦略上、内固定材料は償還価格の高いチタン製に移行しており、ステンレス製のロッキングスクリューやプレートは存在しないとシンセスから説明を受けていました。しかし、抜釘してみると使用されていたプレートやロッキングスクリューはなんとステンレス製だったのです!
おそらく材質の違いが原因だと思いますがロッキングスクリューは緩んでおり、プレートから完全に浮いている状態でした。幸い骨癒合していましたが、これではロッキングスクリューの意味がありません。
少なくともロッキングプレートやスクリューに関してはステンレス製は危険だという認識を抱きました。チタンの”からみつく”ような材質の特徴が、ロッキングシステムの強固な固定力の源泉だったことに改めて気付かされました。
シンセスに確認すると海外で安価な内固定材料を要求される国ではステンレス製を納品しているとのことでした。そして、日本国内においてチタン製のみ使用されている状況は単にシンセスの利益追求の結果です。
私は、通常のプレートはステンレス製の方が性能が良いと考えており、利益のために性能の良いステンレス製の内固定材料を犠牲にするシンセスの姿勢を苦々しく思っていました。しかし、ロッキングシステムに関してはシンセスの姿勢が患者さんに良い影響を与えているようです。
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