昨日の手術は、午前・午後とも人工股関節全置換術(THA)でした。5月はTHA+TKAで13件でした。整形外科医3名なので、少しハードワークかなと思います。
午前の方はかなりの臼蓋形成不全でした。単純X線正面像では寛骨臼が絶壁のようになっています。作図上、寛骨臼外側縁から約20mmの部位を上縁にしてリーミングする計画を立てました。
しかし、単純X線像は3Dではないので、実際に寛骨臼を展開すると画像とは少し異なります。単純X線正面像での寛骨臼外側縁の骨棘は、実際には前上方の骨棘であることが多いです。
したがって、”寛骨臼外側縁から約20mmの部位がリーミング上縁のターゲット”という計画は現実的ではない症例があります。このような場合、原臼蓋がメルクマールになることがあります。
特に単純X線正面像で原臼蓋と新臼蓋とが分かる場合には、原臼蓋上縁が絶好のメルクマールとなるのです。実際の寛骨臼内には原臼蓋上縁が軽いエッジになっています。
軽いエッジになっている原臼蓋上縁を目安にリーミングの高さを判断すると、ほぼ術前計画通りの”カッコイイ位置”にカップを設置できます。
高度臼蓋形成不全股の術前計画でカップの設置位置を悩んで結果、カップのCEAが0度ちょっとしかないようなスリリングな位置に、実際にカップが設置できたら本当に気持ちいいです(笑)。
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初学者がTHAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です
人工股関節全置換術
リーミング
昨日の午前も人工股関節全置換術(THA)でした。
ダブルフロアを形成している典型的なOAの症例でした。
寛骨臼のリーミングの際に掘削の深さが問題になります。私は当初、3mm 丸ノミを用手的に刺入して内板までの距離を測っていました。
しかし最近では月状窩周囲の骨棘をリーミング前に切除して月状窩底(=ほぼ内板)を展開します。この操作により内板の深さを簡単に目視できるようになります。
月状窩底と周囲の海綿骨との段差が無くなるまでリーミングすることで内板近くまで掘削していることになり、多くの症例でこの深さまでリーミングすることがひとつの目安になります。
月状窩周囲の骨棘をリーミング前に切除することは簡単な操作なので、正確なリーミングを施行するためにもお勧めの方法です。
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人工股関節全置換術
今日の午前は、人工股関節全置換術(THA)でした。
80歳台の外傷性大腿骨頭壊死症(大腿骨頚部骨折後)でした。
M3の掲示板で同様のケースに対してTHAを施行するか人工骨頭挿入術を施行するかで議論があり、人工骨頭挿入術を推す意見が優勢だったことに驚いた記憶があります。
股関節外科医の感覚ではTHAですが、普段やり慣れていない術者からすると人工骨頭挿入術を選択する方が無難なのかと妙に得心したものです。
そうは言っても人工骨頭挿入術はthigh painの原因になるため、股関節周囲の感覚の鋭敏さが残っている若年層(70歳ぐらいまで)はTHAの方が不定愁訴が無く成績が良いと思います。
さて、解剖学的に正常に近い寛骨臼ではいくつかピットフォールがありますが、特に大腿骨頭壊死症で寛骨臼の変形が軽度の場合には、荷重部のリーミングが不十分になることが多いです。
前後壁で固定されているので問題無いといえば無いのですが、単純X線像的には少し気持ち悪さが残ります。大腿骨頭壊死症では患側の脚長が長くなりがちなので、寛骨臼上方のリーミングを心掛けたいものです。
また、高齢者の場合はリーミングの際に軟骨下骨を貫通すると脆弱な粗鬆骨が全周性に露出してしまい、カップの固定性が不良になることがあります。したがって軟骨下骨はある程度温存するようにリーミングの深さを調節する方が無難だと思います。
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初学者がTHAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です
人工股関節全置換術
昨日の午前は人工股関節全置換術(THA)でした。
特に変わったことも無い方で、手術も問題なく終了しています。
術前CTを計測することで、寛骨臼のどのくらいの深さまでリーミングするかは術前に決定します。実際の手術では計測した深さまでリーミングするのですが、その際の指標がダブルフロア底および内板からの距離です。
特にダブルフロアは、リーミング開始時点では底までどの程度の距離があるのか把握できないことが多いです。以前は掘削しているとダブルフロアが出現するので、そこから3mm丸ノミを用いて内板までの距離を計測していました。
しかし、最近ではリーミング前にあらかじめ骨ノミでダブルフロア部の骨棘を切除してダブルフロア底まで展開しています。リーミング前からダブルフロア底までの距離がはっきり分かるので躊躇なくリーミングできるのです。
少しの手間で安全かつ正確にリーミングできるようになるので、良い工夫かなと思っています。
今日の午前は人工股関節全置換術(THA)でした。
カップのリーミングの際に、掘削する深さを判断するには、下記の2つの方法があります。
1. 寛骨臼の月状窩の削れ具合をみて判断する
2. 3mm 丸ノミを軟骨下骨越しに内板まで挿入して、内板までの距離を判断する
1は、通常のOAでは寛骨臼底はdouble floorになっており、月状窩底が内板に相当します。したがってリーミングして月状窩が無くなると内板まで掘削していることになるので、それ以上のリーミングは危険という判断になります。
最初に、double floor入り口の骨棘をノミで切除するとdouble floor底がよく見えるようになるので、掘削した深さをより確認しやすくなります。
2は、丸ノミ先に付着している血液の長さで内板までの距離を判断します。丸ノミを挿入するときは用手的にグリグリ回すだけで軟骨下骨を貫通して内板まで到達します。
寛骨臼縁とリーマーのエッジの位置関係でリーミングの深さを判断してもよいのかもしれませんが、前記2つの方法に比べると正確さに欠けます。
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下記は、大阪大学の菅野先生が編集された書籍です。人工股関節全置換術の書籍の中では、最もお勧めの書籍です。
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