一昨日は午後から足趾壊疽に対する足趾切断術を施行しました。
閉塞性動脈硬化症(ASO)がベースにあるため、どの高位で切断するべきか悩ましい症例です。
このようなASOがベースにある方に足趾切除術を行っても、創治癒不全を高率に併発してしまいます。末梢循環障害が原因なので術創が治らないのです。
足趾切断術で創治癒しない場合、一般的には足部切断 ⇒ リスフラン切断 ⇒ 下腿切断と中枢に向かって追加手術を行うケースが多いと思います。
しかし、このようなASOで足部壊疽を併発するような方には、全身状態があまり思わしくないケースが多いです。つまり、ほとんどの患者さんで、複数回の手術をできるだけ避けたいところです。
創治癒のみを考えると、できるだけ中枢で切断した方が治癒率が高いです。しかし、足趾壊疽の段階でいきなり大腿切断術や下腿切断術を選択することは勇気が要ります。
足趾壊疽を併発している多くの症例で膝窩動脈を触知せず、表面的には足趾壊疽であっても、実際にはかなり中枢での循環不全が原因であることが多いです。
このため、私は足趾壊疽を治療するときには、足部切断術 → 下腿切断術 →大腿切断術 という順番に切断する高位を中枢側に移動させていきます。
だいたい下腿切断術でなんとか治癒しますが、大腿切断術まで施行せざるを得ない症例も散見します。ASOや糖尿病ベースの壊疽の治療は悩ましいですね。
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下腿切断術
昨日の午後は、感染性足部壊疽に対して下腿切断術を施行しました。
切断手術の皮切デザインは、創治癒の成否に大きな影響を与えると思います。
私は、背側皮切を大きくしたフィッシュマウス皮切を採用していました。背側が大きいフィッシュマウス皮切の問題点は、腹側と背側の長さが異なるため、縫合部に負担がかかることです。
このため部分的に創縁が壊死して、上皮化するまで1ヵ月程度時間が掛かることが多かったのです。そこで今回は腹側から背側に向かうやや斜めの直線状の皮切デザインを試みました。
例えてみれば竹を斜めに切ったような皮切デザインです。この皮切でも背側皮弁が大きいので、背側の大きいフィッシュマウス皮切と同様に脛骨断端を豊富な軟部組織で覆うことができます。
しかし、問題点として創の両端に大きなドッグイヤーができてしまうことが挙げられます。数ヶ月するとこのドッグイヤーは目立たなくなりますが、美容面では劣ると言わざるを得ません。
創治癒の確実性を取るか、美容面を取るか難しいところです。結局、背腹側の大きさが均等なフィッシュマウス皮切が、そこそこの確実性と美容性を兼ね備えた皮切なのかもしれません。
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今日の午前は外来でした。
下腿切断術を施行した患者さんが身体障害者診断書を持参されました。
人工関節センター勤務なので、普段から人工関節全置換術の方の身体障害者診断書をたくさん記載しています。こちらの診断書作成では全く頭を働かせず機械的に記載しています。
しかし人工関節ではない身体障害者診断書は、勝手が違うので少し手間取ります。手元に身体障害者診断書記載の手引きが無い場合は、医事課から資料を取り寄せる必要があり億劫です。
このようなことは時々あるので、何か妙案は無いかと考えました。ふと身体障害者診断書の裏面をみると、障害の等級とそれに該当する具体的な障害の一覧表があるではないですか!
灯台元暗しとは、まさにこのことです・・・。おそらく普通の整形外科医は身体障害者診断書裏面の等級と具体的障害例をみながら、診断書の記載・作成を行っているのだと思います。
私は年間100枚以上の身体障害者診断書を記載しているとはいえ、いつも人工関節関係ばかりなのですっかり見落としていたようです。思わぬ所にトリビアが転がっているものだと感じました。
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今日の午前は足部壊疽に対する下腿切断術でした。この方は閉塞性動脈硬化症(ASO)に対して他院で血管内治療を施行されましたが、残念ながら壊疽を併発しました。
総腸骨動脈から膝窩動脈まで広範に閉塞していたようで、なんとステントを総腸骨動脈から膝窩動脈まで継ぎ目無く約45cmも留置されていました。ステントの材質はチタン製なので単純X線像で確認可能です。
下腿中央にも壊疽を併発しかけていたので、本来なら大腿切断術の方がより安全だと思います。しかし、この方は膝関節面より約3cm末梢の膝窩動脈までステントが留置されていました。
もし、ステントが留置されている部位で膝窩動脈を切断した場合、ステント越しに結紮できるのかが不明です。循環器内科のドクターに確認しても経験が無いので分からないとのことでした。
ステント部に血流が保たれていると考えると、その部位で切断した場合には動脈断端の処理が不可能かもしれません。このため膝窩動脈ステント部ぎりぎりの下腿切断で対応することにしました。
ここまで、短断端の下腿切断術は初めての経験でしたが、できるだけ中枢側で切断しようとすると仕方ありません。術後単純X線像ではステントよりも約2cm末梢で切断できていました。
仮にステント部で切断しても結紮できるかもしれませんが、心臓血管外科医が居ない施設ではリスクを取ってステント部で切断する意味は少ないと考えます。
そして、下肢切断術を検討する症例ではステントや人工血管が留置されているケースも多々あるので、これまでの経過と単純X線像でステントの有無を確認することは絶対必要だと思いました。
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