Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
痛風患者はアルツハイマー病発症リスクが低い です。




米国のNa Lu氏らは、痛風と新規のアルツハイマー病(AD)発症リスクとの関連を検討した結果、痛風患者は非患者と比べAD発症リスクが低いことが確認されたと報告した。


今回の知見は,パーキンソン病(PD)において研究が進められている神経変性疾患に対する尿酸の保護作用を支持するものである。


痛風は最も一般的な関節炎で、心疾患や腎疾患リスクの上昇とも関連付けられている。高尿酸血症になんらかの因子が加わると痛風を発症するが、因子が不明なことも多い。


血中に過剰に存在する尿酸は結晶化して、それを白血球が攻撃して血管壁に著明な炎症が生じ激痛を呈する。  


一方で,尿酸は健康な人の体内にも普通に存在する抗酸化物質でもあり、血漿中の抗酸化能の50%以上をつかさどっているとされる。


また,尿酸の酸化ストレスに対する保護作用がPDなどの神経変性疾患の発症に対し保護的に働くという説も提唱されている。酸化ストレスはAD発症にも関与している。


血管性認知症を含む認知症全般を対象に高尿酸血症との関連を示した前向き住民研究が以前に報告されていたが,ADのみを対象とした研究はなかった。  


Lu氏らは「今回の知見から、痛風がADに対する保護作用を有する可能性がある。追認されればPD進行予防法開発の試みがADに対しても正当化されるであろう」と述べている。


                                 





恥ずかしながら、私は尿酸に酸化ストレスに対する保護作用があることを知りませんでした。尿酸=痛風 という認識だったので、尿酸=悪玉 というイメージを抱いていました。


実際、外来で治療している高尿酸血症の患者は、暴飲暴食傾向の方が多いため決してイメージは良くありません。しかし、今回の知見で尿酸に対する評価が180度ひっくり返ってしまいました。


尿酸に認知症を予防する効果が本当に見込めるようなら、ある程度の高尿酸血症を許容しても良いのかもしれませんね。


もちろん、だからと言って暴飲暴食は良くないでしょうし、高尿酸血症を放置して結晶性関節炎を繰り返すことも辛いものです。しかし、物事には両面あることを、今回の知見から学びました。



       
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