人工股関節全置換術(THA)の術中のひとつのヤマは、カップ設置です。
骨質の悪い方や臼蓋形成不全の高度な方では、固定性が甘い場合がときどきあります。


カップの固定性が悪いと術者的にも焦ります。固定性不良の原因が、骨質の悪さに加えてリーミングの偏心である場合などは、リカバリーショットを打ち難い困った状況に陥るからです。


どうしようも無いときには、スクリューのみで固定する場合もあります。経験的には3本のスクリューがしっかり効けば、翌日から全荷重しても問題ないことが多いです。


な~んだ、それならそんなに焦る必要は無いじゃないか! と思うのは早計です。何故ならカップの固定性が無い状況でドリリングすると、カップが容易にずれてしまうからです。


このドリリング中に徐々にずれていくのは最もタチが悪いです。カップ設置角度が10度も異なると致命的なmalalingnmentになりますが、目視ではなかなか正確に判断できないからです。


ホルダーを外す際などにガクッとずれる場合には目視でもずれたことがはっきり分かります。しかしドリリングしながら徐々にずれていく場合には、目視ではまず分からないのです。


何とか3本のスクリューでカップを固定したものの、術後X線像をみてビックリしてしまうという事態を避けるためには、スクリューを1本固定した段階でホルダーを装着することをお勧めします。


寛骨臼内にカップを設置した状況でホルダーを装着することは結構難しいですが、この作業を省略すると痛い目に遭うのでがんばって確認するべきだと思います。




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