小児の外傷で縫合な必要なケースでも、創が小さい場合にはステリストリップのようなテープ材で対応することが比較的多いと思います。
この場合のポイントは、いかにして創周囲を乾燥した状態でステリストリップを貼付するかですが、実はそれだけではなくステリストリップの幅にも注意する必要があります。
ステリストリップのサイズは12mm、6mm、3mm幅の3種類ですが、小児の創は小さいことが多く、思わず3mm幅のステリストリップを選択してしまいがちです。
しかし、3mm幅のステリストリップは、粘着力が弱いのでお勧めできません。翌日にガーゼ交換する際に、粘着力が弱いためすぐに剥がれてしまうことが多いです。
創が小さくても、6mm幅以上のステリストリップを選択するべきだと思います。1cmぐらいの裂創ではステリストリップで創が覆われてしまいますが、意に介する必要はありません。
特に12mmのステリストリップは強力な粘着力です。ステリストリップのみで創を治す場合には、見栄えは悪いですができるだけ幅の広いステリストリップを選択するようにしましょう。
外傷
昨日の爪外傷の補足です。爪甲が割れたときにはアロンアルファ等の瞬間接着剤で修復しますが、接着剤の塗布方法に若干のコツがあります。
(ファミリー薬局から抜粋)
まず、割れた爪同士をぴったり合わせます。すると2つの爪の間から血液もしくは淡血清の滲出液が爪表面に漏出します。これをガーゼ等でふき取って、爪甲表面が乾いた状態にするのです。
これは、瞬間接着剤と爪甲が直接接触して固定性を高めることが目的です。そして瞬間接着剤が固まるまで数分間は爪をぴったり合わせたまま圧迫力を加え続けて待ちます。
これは、瞬間接着剤が爪甲のみを架橋して、爪床に浸潤しないようにすることが目的です。”瞬間”接着剤といえども数分間は待つ必要があるのがピットフォールでしょうか?
表面が硬化すれば出来上がりです。塗布する瞬間接着剤の量が多すぎると、爪郭にこぼれたり固着するのに時間がかかるので、瞬間接着剤の量は少なめがよいと思います。
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今日の午前は外来でした。
世間ではお盆休みに入ろうとしており、外来はめっきり少なかったです。
先週土曜日に指尖部損傷の方が来院されました。電気カンナに指先に当たって完全に先端が欠損していたので、いつものごとくアルミ法を念頭にして治療を行っています。
しかし指尖部損傷の場合、初診時には出血が完全に止まらないことが多いので、3日ほど待機して出血が完全に止まってからアルミ法を開始しています。
さて、初診時に指尖部からの出血を止める手段としては、主に3つほどあると思います。
1. バイポーラで凝固止血する
2. モスキートで血管を10分程度把持して止血する
3. カルトスタット等のアルギン酸塩系の止血剤で止血する
明らかに動脈性の出血がある場合には① ⇒ ③ですが、oozing程度なら③のみ施行しています。ポイントは上肢をある程度挙上した状態で患者さん自身に創部を圧迫してもらうことです。
これは、麻酔が効いている間しかできないので、アルギン酸塩系止血剤・ガーゼ越しに10~20分程度、患者さんに自身で圧迫止血してもらいます。この指示をしておかないと何度もガーゼを交換するハメになることが多いです。
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今日の午前は、人工股関節全置換術(THA)でした。
80歳台の外傷性大腿骨頭壊死症(大腿骨頚部骨折後)でした。
M3の掲示板で同様のケースに対してTHAを施行するか人工骨頭挿入術を施行するかで議論があり、人工骨頭挿入術を推す意見が優勢だったことに驚いた記憶があります。
股関節外科医の感覚ではTHAですが、普段やり慣れていない術者からすると人工骨頭挿入術を選択する方が無難なのかと妙に得心したものです。
そうは言っても人工骨頭挿入術はthigh painの原因になるため、股関節周囲の感覚の鋭敏さが残っている若年層(70歳ぐらいまで)はTHAの方が不定愁訴が無く成績が良いと思います。
さて、解剖学的に正常に近い寛骨臼ではいくつかピットフォールがありますが、特に大腿骨頭壊死症で寛骨臼の変形が軽度の場合には、荷重部のリーミングが不十分になることが多いです。
前後壁で固定されているので問題無いといえば無いのですが、単純X線像的には少し気持ち悪さが残ります。大腿骨頭壊死症では患側の脚長が長くなりがちなので、寛骨臼上方のリーミングを心掛けたいものです。
また、高齢者の場合はリーミングの際に軟骨下骨を貫通すると脆弱な粗鬆骨が全周性に露出してしまい、カップの固定性が不良になることがあります。したがって軟骨下骨はある程度温存するようにリーミングの深さを調節する方が無難だと思います。
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人工股関節全置換術
今日の午前は外来でした。来月に人工股関節全置換術予定の患者さんで、CRPの高値(2.5~4mg/dl程度)が続く方がいます。2.5~4mg/dlを高値とみなすかは微妙なところです。しかしTHA術前の値としては、放置するわけにはいかないレベルです。
術前の血液生化学検査で発覚したのですが、体温上昇は無く身体所見でも明らかな異常所見を認めません。WBCは正常範囲、ESRは軽度亢進しています。尿検査は正常範囲内です。
一体、何がCRP高値の原因なのか検討がつきませんでした。調べてみると、CRP高値の原因としては感染がメインですが、下記のようなことも挙げられるようです(当たり前のことばかりですが・・・)。
・ ウイルス性感染症
・ 細菌性感染症
・ 悪性腫瘍
・ 心筋梗塞
・ 膠原病
・ 外傷・熱傷
この患者さんに関しては、上記のうち悪性腫瘍の可能性のみ否定し切れませんでした。CRP高値が2週間持続していることを説明した上で、胸部~腹部CTを施行しました。
結果は・・・、おそらく憩室炎であろうとのことでした。腹部症状は全く無いのですが、大腸に憩室をみとめ、壁が腫脹しているので憩室炎を最も疑うとのことです。
FOMを1週間処方されて一件落着になりそうです。
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