今日の午前の手術も、人工股関節全置換術(THA)でした。
臼蓋形成不全の程度が強く、大腿骨頚部過前捻だったのでS-ROM-Aを使用しました。


S-ROM-Aはほぼどのような症例でも対応できる優れた機種ですが、それでも寛骨臼周囲の骨棘が大きいとインピンジして脱臼することがあります。


今日の方はトライアルの段階では、さほど易脱臼性が無かったのですが、インプラントを挿入後にトライアルすると、後方への脱臼傾向を認めました。


指を寛骨臼と大腿骨に間に挿入して後方脱臼肢位にすると、明らかにインピンジしていました・・・。おそらく、ステム挿入時の微妙な前捻角の誤差がインピンジにつながったのでしょう。


しかし、インプラントは挿入した後のなので、いくらS-ROM-Aといえども簡単には前捻角の再調整はできません。そこで寛骨臼前方の大きな骨棘を切除することにしました。


指で確認しながら、約15mm×20mm×10mm程度の大きな寛骨臼前方骨棘を切除したところ、著明に後方への易脱臼性が消失しました。やはり骨棘によるインピンジが原因だったようです。


THAの易脱臼性の有無は僅かな差で決まります。したがって、術中に易脱臼性を見つけたら、入念にどこに易脱臼性の原因があるのかを見つけ出す必要があります。


術後に持ち越すと後々やっかいなことになることがあるので、術中にできるだけがんばって原因究明およびその対策を行っておくべきでしょう。



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                       股関節学